歯科医療専門弁護士 小畑 真の歯科事件簿3 医院運営・リスク管理編
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011CASE 02 中途半端な同意書の落とし穴 カルテの意義と限界 カルテは、すべての記録行為の根幹であり、適切な医療を提供するうえでの法的・論理的な出発点です。院長(管理者)には歯科医師法23条に基づき、カルテの速やかな作成と診療完結から5年間の保存が法律上の義務として課せられます。ただし、実務的には診療完結から5年間では不十分です。医療過誤の損害賠償請求は最長20年間可能ですので(民法724条2号)、カルテがなければ診療の正当性の証明が極めて困難になります。リスク管理の観点からは、少なくとも診療完結から10年間、できれば20年間の保存が勧められます。 カルテは、保険診療の算定要件を満たすための記録であることはもちろんですが、その本質は保険・自費を問わず、あらゆる患者トラブルにおいて、行われた診療の正当性を証明する最重要証拠となる点にあります。適切な診療を行っていても、術前の診査記録や画像所見、診断根拠、診断内容、使用材料、術後の状態などがカルテに詳細に記載されていなければ、診療の正当性を客観的に証明できません。反対に、適切に記載されていれば、治療が適切であったことを客観的に示すことができます。 ただし、すべての内容をカルテに記載すると、診療を行う時間が削られてしまいますし、診療と並行して、要点をまとめながらカルテに記載すること自体、かなり難易度が高い行為です。 同意書の意義 ここで、同意書の登場です。事前に準備しておいた同意書を使用

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