デンタルダイヤモンド 2026年2月号
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30糖(LPS)を加えると、脂肪細胞からのIL-6産生が亢進することがわかっている3)。つまり、歯周病患者では歯周病原細菌のLPSが血中へ移行し、脂肪細胞においてIL-6をはじめとしたアディポカインの産生を促進する可能性がある。IL-6は門脈を経由して肝臓に移行し、肝臓におけるC反応性タンパク(CRP)の産生を誘導する。 CRPの上昇はインスリン抵抗性に影響を及ぼすと考えられており、この一連の流れが、歯周病が糖尿病の病態悪化に関与する想定メカニズムとなっている。また、CRP上昇のインスリン分泌不全への影響は少ないとされている。このことは、一般にインスリン抵抗性の関与はないとされる1型糖尿病の患者では、歯周治療前後における血糖コントロールに有意差はみられなかったとする報告とも矛盾しない。 一方で、2型糖尿病患者に対する歯周治療によってHbA1cが改善したとする報告は、数多く存在する。2022年のシステマティックレビューでは、歯周基本治療によって、HbA1cは治療後3、6、12ヵ月後にそれぞれ0.43%、0.30%、0.50%とそれぞれ有意に低下したことが示されている4)。 また、2型糖尿病患者における歯周治療後の炎症性マーカーの変化を検討したメタアナリシスでは、CRPが1.28㎎/Lと有意に低下することがあきらかになっている5)。これは、歯周治療によって全身性の炎症が改善する可能性を示唆している。 さらに、歯周治療が糖尿病に及ぼす影響について、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」6)では、「歯周治療は血糖コントロールの改善に有効か?」というクリニカルクエスチョンに対して、「推奨グレードA」と提言している。歯科界からのみならず、医科界からも歯周治療の重要性が発信されていることはたいへん意義深いものと考える。2.糖尿病が歯周病に影響を及ぼす想定メカニズム 糖尿病が歯周病の進行に関与する機序を以下に示す。①糖尿病によって好中球の貪食能や遊走能などの機能障害が生じる②最終糖化産物がⅠ型コラーゲンやラミニンなどの機能的な性質を変化させ、これによって歯周組織の抵抗性が低下する③高血糖によって生じた口腔乾燥により歯肉の炎症が惹起される④糖尿病による創傷治癒遅延の影響 現在では、主として高血糖下において単球系細胞で生じる炎症性サイトカインの亢進が、歯周炎の重症化に影響を及ぼしているものと考えられている。 糖尿病による歯周病への影響に関する研究の歴史は古い。1990年にNelsonらは、2型糖尿病を高頻度に発症するアメリカのピマ・インディアンを対象とした大規模疫学調査を実施した。これにより、糖尿病患者は同年代の非糖尿病群と比較して歯周病の新規発症率が約2.6倍高いことを報告している7)。 また、ドイツにおけるコホート研究でも、HbA1c 7.0%以上の糖尿病患者では、歯周病の進行や歯の喪失に関するリスクが健常者と比較して高くなることが示されている8)。 最近ではZhengらのメタアナリシスにおいて、糖尿病患者の歯周炎有病率が67.8%、

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