歯周病歯周病原細胞LPS図❷ 歯周病が糖尿病を悪化させる想定メカニズム。歯周病原細菌のLPSは血流を介して脂肪組織に作用し、「脂肪細胞-マクロファージ相互作用」によってIL-6をはじめとしたアディポカインの分泌を亢進させる。IL-6は肝細胞からの高感度CRPの上昇を誘導し、CRPがインスリン抵抗性を増大させることで、糖尿病が発症・悪化する脂肪細胞×マクロファージアディポカインの分泌亢進肝臓IL-6高感度CPRの上昇インスリン抵抗性のCRP増大29周病が糖尿病の病態に負の影響を及ぼす、あるいは糖尿病が歯周病の進行を促進するという、いわゆる一方通行の因果関係ではない、両者が相互に影響を及ぼし合っている関係性が特徴である。 歯科医療の現場において、歯周病と糖尿病の関係は十分に認識されていると感じるが、ここでは両者の関係性の想定機序について、エビデンスとなるいくつかの論文を紹介しながら改めて確認していきたい。 糖尿病は、インスリンの作用不足によって生じる慢性高血糖をおもな症状とする疾患であり、2種類に分類される。1型は多くが小児期や若年期に発症し、インスリン分泌が枯渇する。2型はおもに中年期以降に発症し、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性が相互に作用して進行する。 全糖尿病患者の90%以上が2型糖尿病であり、その発症には遺伝要因に加えて、食生活や運動などの環境要因が大きく影響することから、2型糖尿病は生活習慣病として捉えられている。2019年の「国民健康・栄養調査」によると、わが国において糖尿病と疑われる患者は男性で19.7%、女性で10.8%に上る。1.歯周病が糖尿病を悪化させる想定メカニズム 歯周病が糖尿病の病態に影響を及ぼすメカニズムとして、歯周組織に生じた炎症がインスリン抵抗性の増大を惹起し、過去1~2ヵ月の血糖値の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)の上昇に関与することが示されている2)。 歯周組織に感染が生じると、TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生され、これらは直接的にインスリン抵抗性を誘発する。しかしながら、局所である歯周組織で産生され全身へと血行性に移行する炎症性サイトカイン量はわずかであり、歯周病がもたらすHbA1cの上昇には他の経路の存在も想定される。それが「脂肪細胞-マクロファージ相互作用説」への関与である(図2)。 肥満によって増大した内臓脂肪組織にはマクロファージなどの炎症細胞が浸潤する。脂肪細胞はそのマクロファージと相互作用しながら、炎症性の生理活性物質であるアディポカインの産生を増強する。これまでにin vitroの実験系において、脂肪細胞とマクロファージを共培養し、細菌が産生するリポ多
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