36巻頭特集 筆者は2012年に大学を卒業し、卒後3年目までは琉球大学の口腔外科に在籍した。その後、救歯会との出合いを契機に、「やった」と「できる」は異なることを痛感し、症例発表を通じて学ぶほどに歯科臨床の奥深さを実感するようになった。こうした経験から、経過観察を重視しつつ、患者一人ひとりに誠実に向き合う姿勢を大切にしてきた。 現在は開業して8年を迎え、日常臨床において咬合再構成を必要とする症例にしばしば直面し、その重要性を感じている。咬合再構成は、診断から治療計画、介入のタイミング、さらには長期的な安定性に至るまで、多岐にわたる判断を要する複雑な領域である。筆者自身もその難しさに直面してきたが、術者主導で新たに顎位を設定するのではなく、患者が有している既存の顎位をできるかぎり踏襲し、その範囲で調和を図ることを基本姿勢としている。 本症例は、筆者が開業2年目(卒後8年目)の際に取り組んだものであり、開業後の大きな課題であった「歯科衛生士とともに、歯周基本治療をしっかりできる歯科医院を構築したい」という強い思いを背景としている。治療の過程で直面した課題や工夫を振り返り、同様の課題に挑む臨床医にとって一助となることを期待したい。 患者は43歳、男性。「歯の抜けたところを治療したい」との主訴で来院した。高校生のころに矯正治療を受けており、その後は定期的に歯科医院へ通院していたものの、直近では半年ほど前にクリーニングを受けたのみであった。 数ヵ月前に他院で抜歯処置を受けて以降、食事のしづらさを自覚し、当院への来院に至った。生活習慣としては、歯磨きは1日1回で、電子タバコを1日5〜6本吸う喫煙習慣があった。職業はデスクワーク中心の会社 症例の概要伊藤準之助Junnosuke ITO神奈川県・いとう歯科医院/DFC(救歯会)広汎型重度歯周炎に対する包括的な治療
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