デンタルダイヤモンド 2026年1月号
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44巻頭特集 欠損歯列に対する処置方針として、可撤性義歯やインプラントが挙げられるが、処置方針を決定する際は患者の希望や背景に加えて、上下顎の対向関係や顎堤の状態、そして残存する歯の状態といった「ひと・くち・は」の要素を考慮することが重要だと考えている。 一口に欠損歯列といっても、治療の難易度はさまざまである。なかでも、すれ違い咬合の症例は上下顎での受圧条件と加圧因子のバランスが崩れ、治療に苦慮することが知られている。 本稿では前後的すれ違い咬合の傾向が強く、残存歯の動揺のコントロールと、咬合および咀嚼を安定させるために可撤性義歯の設計を模索した症例を提示する。 患者は62歳の女性で、「歯がグラグラする」、「入れ歯が当たって左下の歯ぐきが痛い」ことを主訴に来院した(図1〜4)。歯科既往歴としては、30代で左下臼歯部が欠損し、40代で右下臼歯部、そして50代で上顎前歯が下顎前歯の突き上げにより抜歯となった。欠損の流れは比較的緩やかであったものの、パノラマX線写真(図1)では右側の顎堤吸収が著しく、残存歯の配置から、前後すれ違い咬合に移行していく可能性が高いと考えた。 下顎には義歯が装着されており、臼歯部の咬合支持は辛うじて確保されている状態だったが、とくに上顎では多数の残存歯に動揺を認めた。デンタルX線写真(図3)では、残存歯の多くは劣形根であり支持組織量も少なく、Questionable toothが多数あることがわかった。左下の顎堤にはたびたび義歯性潰瘍ができることから、左側が主咀嚼側であると推測された。 本症例では、前後すれ違い咬合一歩手前の状態であり、上顎に多数の動揺歯を抱えてい 症例概要 トリートメントデンチャーの改変 (図5)中村一寿Kazutoshi NAKAMURA神奈川県・青葉台なかむら歯科/火曜会(なんかよう会)多数歯欠損を伴う歯列への咬合再構成

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