表❶ 鑑別疾患とそのポイント蜂窩織炎血腫アレルギーガス産生性感染症全身症状・疼痛強度が強い疾患鑑別点発赤・発熱・圧痛あり捻髪音なし掻痒・紅斑あり 気腫は、何らかの原因によって皮下組織や臓器の間隙に空気やガスが迷入して生じます。とくに歯科治療中の皮下気腫(Dentalsubcutaneousemphysema)は、エアタービン・エアシリンジなどの圧縮空気が粘膜下組織に侵入し、皮下組織間隙に空気が貯留する医原性合併症です。好発処置としては、重度歯周炎(付着歯肉が失われた)に対する吹き付けバイオフィルム除去、下顎智歯抜歯時のエアタービンによる歯冠切断時のエア、根管治療時のスリーウェイシリンジによる送風・強圧洗浄、過酸化水素水での根管洗浄、レーザー照射器使用中のエア送気などがあります。 歯科医院での対応として、小規模の場合には処置した組織周辺の触診で“パチパチ”という捻髪音(crepitus)が生じます。患者に組織中に空気が入りやすい状態であったことを説明し、化膿止めを3日間処方し、処置はとくになく経過観察していきますが、必ず翌日に来院してもらいます。数日中には、組織中に空気が拡散して治癒します。注意が必要なのは、歯性感染症によるガスや頭頸部外傷など外傷性気腫です。 おもな症状として、治療直後からの片側性顔面・頸部の急激な腫脹がみられ、皮膚は発赤・熱感に乏しく、痛みは軽度〜中等度、触診で捻髪音、部位によっては開眼困難がみられます。進展例では、嚥下障害、嗄声、呼吸苦(縦隔気腫を伴う場合)がみられます。 発症経緯の確認が最も重要であり、「処置中に“パン”“バリッ”という感覚や音があったか」を確認します。患者への状況説明を行い、処置中の発症であれば、処置の中止・中断を検討します。治療中または治療直後などの発症時刻も重要です。急速な腫脹の進行の有無、嚥下困難・呼吸困難の有無、胸部違和感(縦隔気腫示唆)、そして“ブツブツ”、“パチパチ”といった捻髪音の確認ですが、エアを押し広げないように注意深く行います。 顔面・頸部の非対称性腫脹を視診で確認したら皮膚の触診を行い、捻髪音(雪を踏むような感触)を確認します。画像診断として歯性感染症との鑑別のためにパノラマX線検査や、皮下・傍咽頭・縦隔内のガス像確認のためにCT撮影をすることも重要です。呼吸苦症状はなくても酸素飽和度は測定し、カルテに記載しておきます。 鑑別診断として、蜂窩織炎、血腫、アレルギー、ガス産生性感染症などが考えられるため、その鑑別ポイントを表1に示します。150150
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