歯科での対応に苦慮する29疾患~その審査・治療・薬剤処方から保険算定まで~
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 「いつも口が開いている」、「食事に時間がかかる」、「発音が不明瞭」。こうした保護者の気づきに歯科医師としてどう対応すればよいのでしょうか。近年注目されている「口腔機能発達不全症」は、硬組織疾患や歯周疾患とは異なり、咀嚼・嚥下・構音といった口腔機能の発達遅延・獲得の誤りに焦点を当てた新たな疾患概念です。 子どもの発達には個人差があるとはいえ、適切な時期に介入することで、正しい成長に導くことが可能です。その最初のきっかけとなるのが、「もしかして……」という違和感や気づきです。そして、日常診療でできる評価と対応こそが、子どもの将来に大きな違いをもたらします。 本症は、あきらかな器質的異常(口蓋裂など)や神経筋疾患がないにもかかわらず、口腔機能の獲得が年齢相応に達していない、あるいは誤って獲得している状態です。具体的には以下のような症状がみられます1)。①食べるのが遅い、ムラがある②口が閉じられず、常に開口傾向にある③発音がはっきりしない、舌足らずな話し方になる④嚥下時に舌を突き出す、片側でばかり嚙む など これらは保護者にとって“日常の困りごと”であると同時に、歯科医療の介入によって改善可能な状態です。重要なのは、「成長とともに自然によくなるもの」と捉えるのではなく、歯科的な介入によって機能の発達を支えることができるという認識をもつことです。 口腔機能発達不全症は、広く国民に知られているわけではなく、歯科医院での個々の患者への対応や教育がたいへん重要です。ウェブサイトで「お口ポカン」というサイトを紹介したり、病態と健康被害をしっかりと説明し、訓練によって確実に改善することが可能であることもあらかじめ伝えておきましょう。 まずは、保護者の“気になること”に耳を傾けることから始めましょう。突然「あなたのお子さんは、口腔機能発達不全症です」と伝えるのではなく、「最近、お食事のときに時間がかかりますか?」、「普段、お口は閉じていますか?」といった会話から自然に聞き出すことが効果的です。 病名を伝える際は、「お口の機能が少し育ちにくいタイプです」、「成長をお手伝いできます」といった前向きな表現を使い、保護者の不安を和らげましょう。“治療が必要な異常”ではなく、“発達を促す支援”として捉えてもらうことが大切です。保護者の理解と協力を得ながら、家庭と連携して進めていくことで、子どもの成長を力強くサポートできます。 診断には、日本歯科医学会が策定した年齢別のチェックリストを用います。離乳前と離乳後では評価項目が異なります(口腔機能発達不全症チェックリスト(離乳前/後):本項の「保険解説・算定方法」参照)1)。 さらに、舌圧や口唇閉鎖力を測定する機器を活用することで、保護者への説明や経過観察がより明確になります。重要なのは、結果を単発で捉えるのではなく、「成長曲線」として経時的に評価する102102

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