書評
海外文献120編から読み解くペリオの世界 検査・歯周基本治療・メインテナンス篇
関野 愉(日本歯科大学生命歯学部 歯周病学講座)
根拠ある臨床を行うための必読書『海外文献120編から読み解くペリオの世界 検査・歯周基本治療・メインテナンス篇』
私は20代後半のころ、かねてより目標にしていたスウェーデン・イエテボリ大学 歯周病科の研修を受講しました。そのときの親睦会で、イエテボリ大学の歯科衛生士の方が凛として、「私は歯科衛生士を生涯の仕事と考えています」と答えていました。続けて、「イエテボリ大学の歯科衛生士は年間多くの論文を読み、自らも研究して論文を書いています。そして、研究を重ねて、過去の自説を否定する論文を書く勇気もあります」と語っていたことが、いまでも印象に残っています。
それまでの私は、教科書を頼りに臨床経験を積むことに専念しており、海外の論文までは触れていなかったので、彼女の言葉に衝撃を受けました。同時に、科学的根拠に基づいた歯周治療を行うことの強みを知り、その後も学び続けました。
本書は、日本の歯科衛生士が臨床現場で歯周治療を行うにあたって役立つ論文を、著者である関野 愉先生が選び、嚙み砕いて解説してくださっています。論文を読み慣れていなくても、「POINT」として、そのエビデンスを評価して集約された箇所があり、理解しやすくなっています。
興味深い項目をご紹介すると、「ヨーグルトはプラーク中の細菌を減少させる?」では、TVで話題になった「ヨーグルトで歯磨きすると、歯周病の予防になる」ことに関するエビデンスが示されており、患者さんへの情報提供に役立ちました。
日々の臨床に追われながら、星の数ほどある論文のなかからエビデンスを評価して読み解くのは、たいへんなことです。本書は、「歯周治療における科学的根拠に基づいた情報を、歯科衛生士として自信をもって伝える」ための心強い一冊になると考えます。ぜひ手にしてください。
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海外文献120編から読み解くペリオの世界 検査・歯周基本治療・メインテナンス篇
[著]関野 愉(日本歯科大学生命歯学部 歯周病学講座)
A5判・248頁
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定価(本体4,000円+税)