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書評

小児歯科はじめましょう

【編著】田中晃伸(茨城県開業)
    仲野和彦(大阪大学大学院)
    権 暁成(東京都開業)


少子化の現代だからこそ
小児歯科の潜在的需要は高い

 厚生労働省の報告では、歯科診療所の受診患者の3人に1人以上が65歳以上といわれているなか、0〜14歳の患者の歯科診療所の受診状況は、35年前と比較して半減している。
 少子高齢化が進むなか、オーラルフレイルという言葉を耳にする機会も増え、今後さらに増加する高齢者に対し、口腔機能の向上が重要視されている。
 一方で、減少していく方向にある小児患者に対してはどうであろうか?
 少子化の現代において、小児患者に対し、われわれ歯科医師が果たすべき役割も減少していくのであろうか?
 少子化の時代だからこそ、現代の親たちは、わが子のより健やかな成長を強く願い、子どもの相対的価値が高まっている。実際に多くの親がわが子に対し、質の高い歯科治療を求め、小児期からの予防や矯正治療に高い関心を示している。したがって、小児の患者数は減少していても、小児歯科の潜在的需要は極めて高いのではないだろうか。
 小児歯科専門医にかぎらず、一般臨床家においても、これからの時代は、小児患者はもちろんのこと、その保護者の要望にも応えられる知識と技術が求められる。
 一般臨床家にとって、インプラントや歯周治療、歯内療法など、卒後も研鑽し、知識や技術の向上を図らなければならないことはたくさんあるため、小児歯科に関する研鑽まで手が回らないケースは多い。私自身、小児歯科の知識は卒後アップデートされずに、治療も成人の治療の延長で行ってしまっていた面も否めず、経験でなんとかしてきてしまったように思える。
 本書は歯科大学の小児歯科学の専門家をはじめ、小児歯科専門医やスペシャリストともいうべき開業医の先生方が、ベーシックからアドバンスな臨床テクニック、アイデアに至るまで、余すことなく解説している。いま必要とされる知識・情報が網羅された良書であり、改めて学び直す、よい機会となる。
 また、各チャプターは、小児患者の治療を行ううえでベースとなるステップが大きく分けられ、さらにそれぞれの項目のなかで具体的な内容がコンパクトにまとめられていて、非常に読みやすい。「いままさに気になる」ことを拾いやすい構成になっている。
 日々、小児患者の治療にあたる一般臨床家としては、診療室に必ず置いておきたい、すぐに役立つ一冊である。

(文・稲垣伸彦/東京都・みどりが丘歯科クリニック)
[デンタルダイヤモンド 2020年9月号掲載]

小児歯科はじめましょう

小児歯科はじめましょう

【編著】田中晃伸(茨城県開業)
    仲野和彦(大阪大学大学院)
    権 暁成(東京都開業)

A4判・212ページ・オールカラー
小社より好評発売中!
定価(本体8,500円+税)


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