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書評

わたしが守る・みんなで見守る 子どものみかたBOOK

[監修]髙野博子(東京都開業)


かかりつけ歯科医として
子どもを診る歯科医師にとって頼りになる一冊!

 40年以上小児歯科臨床に携わってきた私でも、臨床を継続するうえで新しい情報の収集は必須です。とくに少子化が進行した社会状況のなかで、子どもに対する保護者の意識も変化し、う蝕予防だけでなく歯列や咬合、口腔機能についての関心も高まってきています。
 歯科に対するニーズが多様化している昨今、それぞれの親子の状況に合わせた対応をしていくためには、小児の歯科診療に関する最新の知識や技能が欠かせません。
 本書では、日本小児歯科学会専門医・専門指導医である27名の女性歯科医師が、「小児を診るうえで知っておきたいコツと、臨床医が押さえておきたいワザ」をわかりやすく解説しています。
 1章の「ベーシック&トピックス」では、小児歯科に関する基礎知識や最新情報が収載され、近年注目されている口腔機能発達不全症や低ホスファターゼ症(HPP)を早期に発見して対応することの重要性も述べられています。
 2章の「治療のレベルアップポイント」では、う蝕予防から診断、治療までの留意点がまとめられており、加えてスポーツ外傷や先天性心疾患児への対応も取り上げられています。
 3章の「一歩先を考えるコミュニケーション」ではさらに視点を広げて、妊婦、不協力児、障害児、小児がん経験者など特別な配慮が必要な人たちへの対応のポイントや、機能発達を考慮した食事指導、乳幼児からの長期管理、児童虐待発見に関する歯科の役割などが、臨床におけるコミュニケーションを切り口にまとめられています。
 本書のタイトルにある「みかた」には、いろいろな漢字があてはめられると思います。まず、子どもとその成育環境をよく見る「見方」、専門家の立場で診る「診方」、そして、見守っていく「味方」など、さまざまな「みかた」で子どもを守り育てるという女性歯科医師の視点が感じられるのも、本書の大きな特徴だと思います。
 「健やか親子21(第2次)」の指標として、「子どものかかりつけ医(医師、歯科医師など)を持つ親の割合を増やす」ことが挙げられています。3歳児でかかりつけ歯科医をもつ親の割合は、平成26年度の40.9%から平成30年度には48.8%に増加しています。う蝕がなくても乳幼児期からかかりつけ歯科で歯科健診や予防処置などを受けることが推奨されている現状のなかで、小児の歯科診療のヒントが詰まった本書は、かかりつけ歯科医として子どもの時期から歯・口の健康管理を行っていこうという歯科医師にとって力強い「味方」になってくれるものと思われます。

(文・井上美津子/昭和大学客員教授 小児成育歯科学講座)
[デンタルダイヤモンド 2021年9月号掲載]

わたしが守る・みんなで見守る 子どものみかたBOOK

わたしが守る・みんなで見守る 子どものみかたBOOK

[監修]髙野博子(東京都開業)

B5判・176頁・オールカラー
小社より好評発売中!
定価(本体6,700円+税)


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