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書評

藤本研修会 Standard Textbook 2 Occlusion & Prosthodontics

[監著]藤本順平・錦織 淳


いまの時代にふさわしくアップデートされた
“補綴、咬合学のスタンダード”

 歯科医師にとって、補綴と咬合はさまざまな意味で臨床の中心をなすものである。改めて考えてみると、一般の歯科医師が補綴と咬合に触れない一日はない。歯周治療とインプラントを中心に臨床を行っている筆者にとっても、それはまた然りである。しかしながら、世の中の咬合理論や補綴手法には、さまざまな治療流派が存在する。それは、これらの世界が“Evidence Based”で論ずることができるものではない、すなわち、どれがよくてどれがよくないかと言い切れる単純なものではないからだと筆者は考える。

 藤本研修会の創始者、藤本順平先生は日本の歯科界のレジェンドである。研修会受講のOBとして、自分の歯科医師人生のターニングポイントを作ってくださったのは順平先生である。そして、技術云々だけではなく、歯科医師として患者さんにいかに向き合うべきかというもっとも大切なことを学んだのは、大学教育ではなく先生の研修会だったのである。順平先生をメンターと仰ぐ歯科医師は多い。

 順平先生はリタイアをされ、その藤本研修会の正統な後継者である錦織 淳先生が中心となり、師弟により編まれたのが本書である。また、補綴・咬合コースだけでなく、藤本研修会のテキストブックの一冊として刊行された。筆者にとって補綴関連の書籍に目を通すのは久しぶりのことであったが、“中心位”、“アンテリア・ガイダンス”、“ディスクルージョン”といった研修会を彩るキーワードとともに、研修会を受講した30年前のことが甦ってきた。いかに毎日の臨床に、藤本研修会で学んだことがベースになっているかを改めて認識をさせていただいた。

 もちろん、そこには変わるものと変わらないものがある。錦織先生による内容は、インプラントやオールセラミック修復などを含み、いまの時代にふさわしくアップデートがされている。

 藤本先生はよく「歯科医学は、“Science&Art”である」とおっしゃっていた。科学の部分だけで論ずることができないのが歯科であり、そこにはどうしてもテクニック的側面が存在する。本書はその“Science&Art”をバランスよく配置し、藤本研修会の補綴・咬合コースと同じように品格を備えた重厚な書籍となっている。本書の内容をマスターすれば、補綴臨床で怖いものはないだろう。

 これから本格的な補綴を志す若い歯科医師たちのみならず、多くの歯科医師にとって座右の書となるのが、“補綴、咬合学のスタンダード”たる本書である。

(文・二階堂雅彦(東京都・二階堂歯科医院))
[デンタルダイヤモンド 2018年10月号掲載]

藤本研修会 Standard Textbook 2 Occlusion & Prosthodontics

藤本研修会 Standard Textbook 2 Occlusion & Prosthodontics

[監著]藤本順平・錦織 淳

A4判/268頁
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定価(本体18,000円+税)


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