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書評

院内ニンゲンカンケイのおなやみQ&A

【著】中原三枝


歯科医院によくある“人”の問題の特効薬

 本書は、院長サイドとスタッフサイドからのよくある相談に回答する形式で執筆され、解決策を講じている。時には優しく諭すように、時には厳しく律するような辛口の回答もあり、とても説得力がある。
 本書を読み進めるなかで、院長もスタッフも医院をよくしようとして相談している質問がほとんどであると感じた。お互いのコミュニケーション不足で生じている悩みに対し、著者の中原さんが当事者には見えていない問題を明確にし、第三者として中立な視点から解決策を論理的に提示している点が、読者を納得させるものになっている。
 本の構成もすばらしく、1章「組織」では、院長にはチームリーダーとしての役割や見直さなければならない点、スタッフにはチームの一員としての自覚や働き方、改善法などが示され、私もたいへん勉強になった。
 2章「人事」では、雇用側の面接時のチェックポイントが詳細に示され、女性を面接するうえでの評価方法に頭を悩ませている男性院長にはとても参考になる内容ではないだろうか。また、雇用される側の職場選びのポイントでは、とくに新卒者が参考になるであろう。反対に、退職を考えている人は自分を見つめ直すきっかけとなる内容がロジカルに書かれており、心に響く内容であると感じた。
 3章「教育」では、人を育てる側、育ててもらう側それぞれの心構えが的確に述べられ、4章「診療」では、治療中断患者や子どもへの対応、受付の電話応対などのよくある問題への対応策が詳細に記されている。
 5章の「経営」では、院長サイドの経営に対する数字意識の重要性がわかりやすく説明されており、とても参考になった。また、院長からスタッフに言いにくい節約などの意識づけも、第三者の立場から説得力ある言葉で解説され、読んだスタッフはハッと気づかされるのではないかと思う。
 6章「福利厚生」、7章「エトセトラ」も、頷きながら楽しく読める。最後の8章では、問題点を自分で解決する練習になる「書き込みドリル」方式で、14の項目が収められている。これらは、問題解決の方法を読者自身で見出せるようになってほしいという中原さんからのメッセージであろう。
 このように、Q&A方式でありながら細部まで行き届いた本書は、歯科医院のどこにでもある悩みに対し、心と頭を整理整頓するのに最適なガイドブックである。ぜひとも多くの方々が手に取り、院内の問題解決に役立てていただきたいすばらしい本である。

(文・林 美穂/福岡県・歯科・林美穂医院)
[デンタルダイヤモンド 2019年6月号掲載]

院内ニンゲンカンケイのおなやみQ&A

院内ニンゲンカンケイのおなやみQ&A

【著】中原三枝
(スタイリッシュパフォーマンス協会)

B5判変型・176頁・オールカラー
小社より好評発売中!
定価(本体3,400円+税)


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