デンタルダイヤモンド社

小児を診るための必須知識を一冊に凝縮！
『DHstyle増刊号　歯科衛生士のための小児歯科のきほん』

　2020年は全世界が新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の対応に振り回され、生活様式の大幅な変革を強いられた年であった。歯科医院においても例外ではなく、当院では未知のウイルスへの対応策がわからず、４月に緊急事態宣言が発令されてから約１ヵ月の間、予約診療をすべてキャンセルし、午前中の救急診療のみとする選択をした。歯科医院を運営するうえで必要な意思決定のための情報があまりにも不足していたため、やむを得ない措置であった。
　一方で、世の中がコロナ対応で右往左往しているなか、和田匡史先生、武知幸久先生、栗林研治先生、立浪康晴先生、瓜生和彦先生をはじめとするMID-Gの先生方が、コロナ禍での医院運営に関するノウハウをわずか６ヵ月足らずでまとめられたことは驚嘆すべきことであり、制作にかかわった先生方に敬意を表したい。本書の内容を知っていればもっと違った対応ができたのではないかと思う事象が多くあり、友人である和田先生にもっと早く相談すべきであったと痛切に後悔した。 　本書の第１〜４章には、医院経営に必要な「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」という経営資源をコロナ禍でどのように運用するのかについて、有益な知見が散りばめられている。また、第５章には具体的な「実践例」が示されており、非常に実用的な内容となっている。
　本書には筆者が実際に経験して困った内容や、判断に苦慮した内容が多く記されており、読み始めると時間が経つのも忘れ、気がつけば２時間ほどで読破していた。
　患者数減少を伴う緊急事態が長期間続けば、経営者としてスタッフの解雇も不本意ながら検討しなければならない。そうした実体験を学ぶことができたのは今後の備えとなった。また、一時期枯渇していたマスクやアルコール消毒液など、診療に欠かすことができない医療物資の調達方法や、歯科医院におけるテレワークの可能性について、実践例を交えた言及もあり、たいへん興味深かった。そして、医院の健全運営に必要な運転資金はどのくらいかといったことや、補助金・助成金に関する内容を理解できたことで、精神的なゆとりを得られた。
　さらに、今後のWithコロナ・Afterコロナ時代の見通しについても述べられているため、その変化に対応するために何を準備するべきかについて考えることができた。本書はまさに、「Withコロナ時代を生き抜くために必読の書」であると、強く推薦する。

（文・小田師巳／大阪府・おだデンタルクリニック）
[デンタルダイヤモンド 2021年2月号掲載]