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書評

歯内療法の三種の神器 すぐに役立つ世界標準のテクニック&最新トレンド

[編著]北村和夫


歯内療法の“今”を広く網羅した一冊

 “見えないし、よくわからない”と、歯内療法でお悩みの先生も多いのではないでしょうか?
しかし近年、「盲目的な治療を行わざるを得なかった根管治療において“見える”治療が可能になった」(本書introductionより引用)とあるように、歯内療法は確実に進歩しています。

 本書は、歯科用コーンビームCT(CBCT)、マイクロスコープ、NiTiファイルを歯内療法における三種の神器とし、それぞれ第一人者の先生が、器具・機材の特徴や使い方に重きをおいて解説されています。また、治療を成功に導くためには、ラバーダム防湿をはじめ、無菌的な処置を行うことなど、基本の大切さも明記されています。

 本書は4章で構成されています。1章では、CT画像の限界、CBCTでわかることとわからないこと、歯内療法への応用にあたっての診査手順、デンタルX線写真で診断できず、CT画像で診断がついた症例などが解説されています。

 2章では、マイクロスコープの特徴について、光源や設置方式、記録装置、取り扱いの注意点まで簡潔にまとめられています。また、マイクロスコープがなければ安全確実には行えないであろう、メタルコアやガッタパーチャポイント、そして破折器具の除去、イスムス処理、穿孔部封鎖、VRF保存療法、逆根管治療などが詳細に示されています。

 3章はNiTiファイルの特性と変遷の解説の他、HyFlex™ EDM、TF™ Adaptive、SAF、 RECIPROC、 WaveOne Gold、 Pro Gliderの各ファイルの特徴と安全に使用するためのプロトコールが解説されています。専用モーターが必要なファイルも増えており、気軽に購入しにくくなっているなか、自分の考えに合うファイル選びの一助になるのではないでしょうか。

 4章のトピックスでは、将来のバイオ再生医療を見据えた歯髄細胞バンク、CTデータから3Dプリントの応用、MTAの基礎や病理から応用法まで、バイオセラミックの応用、根未完成歯へのRevascularization法、エマージェンシーパルポトミー、根管治療後の術後痛、非歯原性疼痛への対応、新たな根管洗浄法や根管充填の概念、支台築造の臨床的ガイドラインなど、臨床ですぐ役立つことから、最先端医療への可能性まで、読み応えのある項目が目白押しです。

 現在、保険診療においても部分的にマイクロスコープ加算やCBCT撮影も取り入れられ、新たに学び始めるタイミングとしては、追い風が吹いているように思います。

 本書は、すでに三種の神器をお持ちの先生方にとっては、臨床ですぐに応用できるテクニックやヒントをたくさん学べます。また、まだお持ちでない先生や、歯内療法が苦手な先生には、従来の方法から激変している新しい歯内療法の“今”を知るためにお勧めしたい一冊です。

文・下山泰明
埼玉県・シモヤマデンタルオフィス
[デンタルダイヤモンド 2017年1月号掲載]

歯内療法の三種の神器 すぐに役立つ世界標準のテクニック&最新トレンド

歯内療法の三種の神器
すぐに役立つ世界標準のテクニック&最新トレンド

[編著]北村和夫

A4判・176頁・オールカラー
定価(本体8,000円+税)


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