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書評

歯科医院ではたらく若手ドクターのためのチームデビュー講座

[著]     杉元信代
[絵]     あらいぴろよ


悩める若手ドクターの不安を解消

  杉元信代さんの『歯科医院ではたらく講座シリーズ』から、ついに出ました、若手ドクター編。歯科医院の経営や、歯科衛生士・スタッフの教育についての書籍はよく目にしますが、「若手ドクター」にフォーカスを当てたところが、歯科衛生士と心理カウンセラーとして経験豊富な筆者らしい、ユニークな目のつけどころです。

  歯科医師免許という国家資格を取得して、「先生」と呼ばれるようになっても、学生時代の大学病院での実習では見学させてもらえるだけで、実際に歯を削ったり詰めたりといった臨床経験はほとんどないのが実情です。巷では、「ゆとり歯科医師世代」と揶揄されています。

  そんな若手ドクターにとって、大学を卒業して研修医・勤務医として歯科医院で働き始めたときに目の前に立ちふさがる最初の壁が、経験豊富なスタッフとのコミュニケーションです。

  右も左もわからないまま、「ここは他のクリニックよりいいぞ!」と思って選んだ研修先や勤務先。いざ働いてみると、治療の知識は乏しく、目の前の患者さんとどう向き合えばよいかわかりません。そんな姿を見かねたスタッフに、「先生なんですよね? 大学で何を勉強してきたんですか?」と厳しい言葉をかけられたときには、「大学での勉強は何だったのか、こっちが聞きたいよ……」と思ってしまいます。

  本書は、そんな悩める若手ドクターにおすすめの1冊です。シリーズ共通の左ページがイラスト、右ページが文章の見開き完結スタイルで、大切なところには蛍光ペンまで引いてある懇切丁寧さ。短い時間で読みやすく、頭にスッと入ってきます。

  「居残り・昼休み実習をした際のスタッフへの気回し」や、「スタッフにとってよい先生は“時間どおりに決められた仕事が終わる先生”」など、社会人としては当然ながら、ついつい抜けてしまいがちなことまで丁寧に解説されており、もしタイムマシーンがあれば、すぐさま飛び乗って勤務医時代の自分に読ませてあげたいです。また、松本勝利先生の友情出演によるQ&A方式のコラム「教えて松本先生!」では、先輩ドクターの豊富な経験談からいろいろなことを学ぶことができます。

  タイトルにある「若手ドクター」自身はもちろんのこと、勤務医を雇っている院長先生やスタッフの方など、歯科業界の将来を担う若手ドクターにかかわるすべての方々にも、ぜひ読んでいただきたいと思います。

(文・安岡大介/兵庫県・安岡歯科医院)
[デンタルダイヤモンド 2017年12月号掲載]

歯科医院ではたらく若手ドクターのためのチームデビュー講座

歯科医院ではたらく若手ドクターのための
チームデビュー講座

[著]     杉元信代
[絵]     あらいぴろよ

A5判・112頁
定価(本体3,500円+税)


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