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書評

マストオブ・リトリートメント

[編著]北村和夫


“リトリートメントの成功率を上げるための必読書!

 「最近、再根管治療——リトリートメントが多い」という声をよく耳にする。とくに根管治療を得意とされている先生からである。もちろん、イニシャルトリートメントをせずに、リトリートメントになることはない。したがって、残念ながら、すでに行われた治療の失敗により再治療が必要になってくるような事態が頻発しているのである。

 この背景を考えると、技術の発展により根管治療がうまく終了した歯が増加したというよりは、一般の方の歯内療法に関する知識量の増加と、なにより「歯を残したい」という強い希望が、この現実に繫がっているように思う。

 根管治療はイニシャルトリートメントとリトリートメントに分類される。この2つの違いは、根管治療をはじめて行うのか、または、すでに根管治療や支台築造が行われている歯への再治療なのかというものである。イニシャルトリートメントの基本的な処置は、無菌環境下で原因の細菌を除去するということだけである。

 しかしながらリトリートメントの場合、修復物や支台築造の除去からはじまり、ガッタパーチャポイントや、はたまた破折ファイルの除去、そして根管系が変更されていた場合の修正など、根管形成に辿り着くまでに苦労することも多いのである。

 本書『マストオブ・リトリートメント』は5章に分かれており、「1章 診断と意思決定」、「2章 クラウンと築造の除去」、「3章 根管形成」、「4章 偶発症への対応」、「5章 根管充塡と築造」、となっている。実際、リトリートメントで頭を悩ます修復物やガッタパーチャポイントの除去は、2・3章に詳細な写真とさまざまな器具とともに解説されている。

 また、編著者である北村和夫先生が選ばれた著者の顔ぶれにもご注目いただきたい。歯内療法専門医または一般開業医が多く執筆しており、その一方で、大学の先生が執筆した項目も、臨床に即したものであり、写真でわかりやすく手順を示しているページが多い。このように、明日からの日常臨床のヒントになることが多く組み込まれているといえる。

 『マストオブ・リトリートメント』の購入の際は、適切なイニシャルトリートメントを行うためのバイブルで、同編著者の『マストオブ・イニシャルトリートメント』と、ぜひ2冊セットで熟読していただきたい。この2冊をしっかりと読み込めば、歯内療法の成功率をどんどんあげることができるだろう。

 日本の歯内療法の水準を底上げするためには、欠かせない2冊であると確信している。

(文・天川由美子/東京都・天川デンタルオフィス外苑前)
[デンタルダイヤモンド 2019年1月号掲載]

マストオブ・リトリートメント

マストオブ・リトリートメント

[編著]北村和夫
(日本歯科大学附属病院)

A4判・128頁・オールカラー
小社より好評発売中!
定価(本体7,000円+税)


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