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書評

マストオブ・イニシャルトリートメント

[編著]北村和夫


適切な抜髄処置を行うために必須の一冊!

 近年の歯髄保存に対する取り組みの甲斐あって、抜髄を行う頻度はかなり減ったと感じている。30年前は連日のように、何人もの患者さんに麻酔・抜髄を行っていたものだが、いまでは1週間に1度も抜髄を行わないということも珍しくなくなっている。

 抜髄が少なくなったのは、たいへんよいことであるが、日常臨床のなかでエンドの再治療が占める割合がなんと多いことだろうか。これらの症例のなかには「適切なイニシャルトリートメントが行われていれば……」という残念なケースも存在する。

 数が減ったとはいえ、ひとたび抜髄が必要となれば、最初の根管治療はその歯の運命・寿命を左右する責任の重い処置であり、学ぶほどその困難さや、適切な処置を行うための知識や技術の会得、適切で効果的な治療器具を備えておくことがきわめて重要であると感じる。

 さて、本書は歯科臨床医の抜髄に対する知識を系統的に整理し、アップデートできるものであり、現代の歯科医学の知識を生かして適切な抜髄処置を行うためのバイブルというべき一冊である。日本人の根管形態の特徴から診断や麻酔法まで丁寧に解説された内容は、卒業間もない歯科医師にとっても、明日の臨床から役立つ入門書になるであろう。

 内容は「マストオブ」というだけあって、すべての項目に「押さえるべきこと」という語尾がつけられ、4章に分かれている。また、計18の項目立てがされているが、1、2章に計12項目と全体の2/3が割かれている。

 第1章では前述の項目に加え、軟化象牙質の除去やMTAによる直接覆髄に関して項目立てされており、抜髄を回避する方法や診断についてもわかりやすく記載されている。

 第2章では、アクセスオープニングから臨床的な術式の順番に沿って解説されており、非常に参考になる。とくに、Ni-Tiロータリーファイルに関する知識・症例が豊富に紹介されている阿部 修先生の項目はたいへん読みごたえがあった。

 第3章では、やはり術式順にどれをとっても重要な3項目が掲載され、迷いなく的確な処置を行うために必須な知識が詰まっている。

 第4章では本書の編者である北村先生が著者として初めて登場するが、基本的なことがしっかりできるように“押さえた”内容であった。根管充塡後に支台のためのスペースを作る方法は、今後、私自身の術式を変えなければと思わせるものであった。

 すべての歯科医師がこの書に目を通し、「押さえるべきこと」を“押さえた”抜髄臨床を身につけ、日本のエンド臨床のレベルアップに繫がることを願っている。

(文・谷本幸司/東京都・デンタルオフィス谷本)
[デンタルダイヤモンド 2018年12月号掲載]

マストオブ・イニシャルトリートメント

マストオブ・イニシャルトリートメント

[編著]北村和夫

A4判・152頁
小社より好評発売中!
定価(本体7,500円+税)


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