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書評

Make the Dental mamelon! こだわりの前歯部精密修復

[著]菅原佳広 (日本歯科大学新潟病院)


前歯部ダイレクトボンディングのバイブル

 近年、患者の修復治療に対する審美的要求度が高まっていると同時に、より低侵襲な術式を望む声が増えてきたことを実感している。その背景として、ウェブ上にはミニマルインターベンション(MI)のコンセプトに基づいたメタルフリー治療に関する情報が溢れており、患者はそれらの情報をたやすく得ることができるからに他ならない。
 術者においても、接着修復材料(コンポジットレジン、ボンディング材)の進歩、治療時に用いる周辺材料(マトリックス、ウエッジ、インスツルメント等)の普及、直接法コンポジットレジン充塡における術式の確立、そしてそれらを裏づける研究論文の報告により、現在の日常臨床のなかで、こと修復治療においては直接法コンポジットレジン充塡のウエイトは大きくなっている。
 とりわけ、大学教育のなかで接着修復治療がもつ優位性を学び、日常臨床においても頻繁に用いる術式であるため、より高いレベルの治療を目指す若い先生方を中心に昨今のダイレクトボンディングブームが起こっているのではないかと推測される。
 たかがレジン充塡(レ充)とお考えの先生方もいらっしゃるかもしれないが、審美性と機能性を兼ね備えた修復治療で、かつ長期安定性が与えられるとなると、されど直接法コンポジットレジン充塡(ダイレクトボンディング)ということになる。
 ダイレクトボンディングとは、術者の知識をもとに診断し、術式ならびに使用材料の選択を行い、チェアーサイドでは身につけたスキルを十分に発揮して、術後のイメージを具現化していく術者自己完結型の究極の修復治療であると考える。
 本書では、ダイレクトボンディング、とくに難易度が高い前歯部の審美回復を必要する症例にフォーカスし、必要な知識ならびに術式や使用材料まで、非常に事細かく紹介されている。
 これは、筆者である菅原先生の臨床に対するスタイルのなせる技であり、いかに低侵襲でありながら高度な審美性を獲得するかという難題に長年取り組まれた結果である。さらに、そうして獲得されたスキルをエビデンスベースだけでなく、経験側から得られた勘どころについても明確な撮影意図をもった高倍率の写真とともに、惜しげもなく披露されている。同じMI審美修復をライフワークに臨床を行っている筆者には、文章や写真からそれらがひしひしと感じ取られた。
 ダイレクトボンディングに興味をもち、スキルアップを図りたいとお考えの先生方には最適の書籍である。繰り返しになるが、ここまで事細かに臨床上の注意点や必要なテクニックとその勘どころが的確に記されたものは、他に目にしたことがない。
 たいへんなご苦労にもかかわらず、これほどの傑作を上梓された菅原先生には敬意を表すとともに、本書はまさにダイレクトボンディングを行ううえで、必読不可欠なバイブルであると強調したい。

(文・脇 宗弘/大阪府・脇歯科医院)
[デンタルダイヤモンド 2021年2月号掲載]

Make the Dental mamelon! こだわりの前歯部精密修復

Make the Dental mamelon! こだわりの前歯部精密修復

[著]菅原佳広 (日本歯科大学新潟病院)

AB判・102頁
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定価(本体8,500円+税)


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