デンタルダイヤモンド社

インプラント治療で遭遇するあらゆる状況を網羅！
対応法を詳細に解説した臨床医の必読書！！

　インプラント治療は、現在ではなくてはならない有効な歯科治療法として世界的に広く普及している。そして、インプラント本体や治療術式、使用材料などの急速な進化は、術者、患者双方に多くの利点をもたらしている。
　しかし、インプラントは人工物であり、天然歯と比較しても組織構造から生体反応に至るまでさまざまな要素が異なり、いまだ解明されていないことも多い。そのため、臨床現場においては思いもよらぬ事態に遭遇することがある。多くの臨床家も感じているであろうが、筆者自身も臨床経験をとおして、インプラントはよいことばかりではなく「諸刃の剣」であるという意識をつねにもって臨床に向き合っている。
　そのような問題意識のもと、本書をさっそく購入し、熟読した。
　本書は、筆者も講演を拝聴して感動で涙したことのある小宮山彌太郎先生による“あるべき真の歯科医療の姿”を示す序章「インプラントを巡るトラブル」に始まり、１章「術中に生じたトラブル」、２章「術後に生じたトラブル」、３章「機能面での補綴トラブル」、４章「審美面での補綴トラブル」、5章「周囲組織のトラブル」、6章「トラブルを予防するためのメインテナンス」、７章「経年的変化への対応」、８章「法律および契約上のトラブル」と、各章ごとに起こり得るさまざまなテーマに対し、エキスパートの執筆陣による、細やかで丁寧な解説がなされている。
　また、新しい多角的な視点でインプラント治療のトラブルを検証し、予期せぬ落とし穴にはまらないためのヒントや解決策が示されている。
　とくに、超高齢社会における高齢患者への対応は避けて通れない大きな課題であるが、本書では患者の寝たきり、在宅治療などにも具体的に言及されておりたいへん参考になる。さらに、患者との法的トラブルの予防・回避法を事例を交えて解説し、トラブルに至った場合の対応のポイントや他院患者からのトラブル相談への対応などの切実なテーマを、幅広く真摯に取り上げている。
　とくに若い先生方はこれからたくさんの患者と長い年月接することになり、さまざまな経験をされるであろう。その経験がよりよいものとなるよう、インプラント治療の負の部分もよく理解し、それを臨床に生かすうえで、本書は大きな役割を果たす最良の指針になると確信している。

（文・松井孝道／宮崎県・松井歯科医院）
[デンタルダイヤモンド 2021年11月号掲載]