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書評

デンタルダイヤモンド増刊号 院内感染防止対策のスタンダード

【編集委員】泉福英信
      岩渕博史
      鈴木信治


Withコロナ時代に必読の書!
いま求められる院内感染防止対策

 「お前は自分を守りたいだけだろ!」
 同業者から実際に投げられた悲しい言葉です。自分を守ることは人を守ることになるという理屈は理解されないのでしょうか? 人を大切にする根本的なことが理解されないほど、つらいものはありません。本書『院内感染防止対策のスタンダード』のなかにも「うちの医院を潰す気か!」という、同様の言葉が出てきます。スタッフに手袋の使い回しを指摘された院長の答えがこれです。
 無理解、誤解、偏見などに対して、自分は、己自身は、どのように考え、どのように対処すればよいのか? 医療とは何か? 誰のために、何のために行うのか?
 本書を読んで、改めて考えさせられました。医の倫理、その具体的かたちの一つとして「スタンダードプリコーション」の理念を再考するのに、“自粛”という目に見えない敵との闘いをしているいまは最適なのかもしれません。マスメディアから得られる情報も、すべてが正しいわけではありません。出典としての成書を紐解く姿勢は、医療者として欠かせません。
 マスクのつけ方一つでも、どちらを表にするのか、どのように捨てるのが正しいのか、気遣いが必要です。わかっているようでいて、正しく人に説明できるかどうか、あやふやな点はあるものです。「手洗い」はなぜするのか? 「滅菌バック」の開ける方向は? どこをどのように清潔を保つのか? 拭ききれない場所はどうするのか? 衛生用品をどう使い分けるのか?そもそも感染とは何か? なぜ歯科医療において感染防止対策が必要なのか? などなど、本書には歯科医療従事者が知っておいたほうがよい内容がわかりやすく記載されています。
 院内感染防止対策が自院に根づかない理由、そして感染症患者を受け入れない理由の一つに「スタッフの同意が得られない」といった声があります。そのような方々にこそ、いや、そのような方のみならず、多くの方に、ぜひ本書を読んでほしいと思います。中小の歯科医院であっても再現可能な多くの対策が記されています。パラパラとめくるだけでもよいです。目に留まったページが引っかかりのポイントであり、考えるきっかけとなるでしょう。
 「スタンダード=普通」です。新型コロナウイルスとの共存が議論される昨今、院内感染防止対策の実行は当たり前のラインです。数年後には改訂版が必要となるかもしれません。しかし、基本がわかっていれば、アップデートは苦ではありません。「自分自身と、大切な人を守るために、いまからでもできること」、そのヒントが本書にあります。

(文・加賀谷 昇/東京都・加賀谷歯科医院)
[デンタルダイヤモンド 2020年8月号掲載]

デンタルダイヤモンド増刊号 院内感染防止対策のスタンダード

デンタルダイヤモンド増刊号
院内感染防止対策のスタンダード

【編集委員】泉福英信
      岩渕博史
      鈴木信治

A4判変型・172頁・オールカラー
小社より好評発売中!
定価(本体5,400円+税)


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