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書評

歯内療法のレベルアップ&ヒント

[編著]北村和夫


豪華執筆陣による、エンドの実用百科事典

  私の勝手なイメージであるが、いままではとかくヒント集というと、薄っぺらな脈絡のない寄せ集め的なものが多いという印象があった。しかし、この書を手にとって驚いたのが、そのボリュームと豪華な執筆者陣の顔ぶれである。執筆者はなんと55名、編著者の北村和夫先生を含めれば56名もの大執筆陣となる。海外で学んできた著名な臨床家の先生や、私自身が学生のときに教わった先生、学会やスタディグループで活躍している先生まで、実に多彩な執筆者たちが、この一冊のために結束している。これは、北村先生の歯内療法に対する情熱、学会人としての見識の広さ、そして人情味あふれるお人柄に惹かれ、皆が協力を惜しまなかったからこそ実現したに違いない。

  そして、内容に目を通していくと、項目が多様かつ詳細であることに、また驚かされる。この書はまるで、エンドの実用的な百科事典である。日常臨床のなかで感じた疑問を、辞書を引く感覚で調べることができる。若手にとっては、知識や手技の確認ができ、困ったときの一助になるだろうし、ベテランにとっても、知識のアップデートに役立つ情報がぎっしり詰まっている。

  注目すべきは項目立てと項目数の割り振りで、これは編者のバランス感覚の見せどころである。なかでも8項目を割いているのが、4章の「根管の拡大形成」と、8章の「再根管治療」であった。これらは近年さまざまなツールが考案されるなど技術の進歩がめざましく、よく話題になっているので、読みごたえがある。

  また、根管治療を語るうえで忘れてはいけないラバーダムや、隔壁、仮封、根管洗浄や根管貼薬についてもきちんと項目立てされており、バランスよく配されている。

  さらに、解剖、痛みへの対応には7項目を割いている。解剖は、歯内療法にとって基本的な重要事項であることは間違いないし、痛みへの対応は、オーバートリートメントに気をつけている私にとっては心に染み入る項目であった。誤った抜髄を行わないためにも、必ず抑えておきたい。

  11章の「トピック」には最多の11項目が割かれている。いま話題のMTAについての話題や、私も所属している日本顕微鏡歯科学会の学術大会において、とくに近年に大会長賞を受賞された先生方による珠玉の論文も収載されており、これらは必見の価値がある。

  ちょうどこれから新年の診療を再スタートさせるにあたり、歯内療法の知識を整理し、アップデート・レベルアップさせるのに最適な一冊である。ぜひ、幅広い年代の先生方に目を通していただきたい。

(文・谷本幸司/東京都・デンタルオフィス谷本)
[デンタルダイヤモンド 2018年1月号掲載]

歯内療法のレベルアップ&ヒント

歯内療法のレベルアップ&ヒント

[編著]     北村和夫

A4判・204頁
定価(本体8,500円+税)


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