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書評

藤本研修会 Standard Textbook 1 Endodontology

[監]石井 宏


歯内療法のテキストブックかつ、
日本における専門医普及のための指南書

 本書を監修された石井 宏 先生とは、いろいろと共通点が多いと、個人的に感じている。年齢は1つ違い(私が1つ下)、大学は違うが、ともにサッカー部に所属していた。海外留学までは至らなかったが、私も藤本順平先生が主催されている研修会のペリオコース(当時の講師は弘岡秀明先生)を受講させていただき、エビデンスベースや海外歯科を意識するようになり、私自身の歯科医師人生にも多大な影響を与えた一人である。また、現在はともに研修会を行う立場であることも共通している。

 本書を拝読した率直な感想を申し上げると、歯内療法という限られたジャンルとはいえ、その内容は接着や保存修復、補綴、外科と多岐にわたっており、私にとっても非常に参考になる1冊であった。7つのChapterに分かれているが、とくにChapter2の「診査・診断・意思決定」は、8項目に細分化されているところに重要性を感じた。ジャンルは異なるが、私がおもに行っている研修会の「ダイレクトボンディング」という治療法も、患者にとっては小さな治療であり、保険でも自費でも行える治療法のため、受講された先生方に「患者にどのように説明し治療の必要性を理解してもらうか」と質問されることが多い。それはまさに、術者側の「診査・診断・意思決定」であり、患者に対する「説明と同意」である。

 「ダイレクトボンディング」の場合、術後の患者満足のなかで、視覚的要素である審美的回復による満足度が大きなウェイトを占めている。しかし歯内療法の場合、患者としては見えない部位の治療であるため、術後の患者満足に視覚的要素が少なく、術前の「診査・診断・意思決定」が非常に重要なChapterなのだと考える。このChapterをクリアできれば、他の6つのChapterにおけるエビデンスに基づくテクニックを、存分に活かすことが可能となるだろう。

 最後に、本書の著者である9人の先生方は、それぞれエンド専門医として、すでに活躍されている方ばかりである。専門医であるということは、他院からの紹介患者も多く、当然ながら責任はとても大きくなる。そうした先生方によって書かれた各Chapterは、内容も充実し、重量感があるものとなっている。

 私事ばかりで申し訳ないが、ダイレクトボンディングにおける自費治療の普及率は、エンド専門医による歯内療法の自費普及率に、はるかに及ばないと感じている。それは、本書のように充実した著者を人選できることでも頷け、石井先生の専門医育成プログラムが実を結んでいる証である。ぜひご一読いただきたいと思う。

(文・青島徹児「埼玉県・青島デンタルオフィス」)
[デンタルダイヤモンド 2018年8月号掲載]

藤本研修会 Standard Textbook 1 Endodontology

藤本研修会 Standard Textbook 1 Endodontology

[監]石井 宏

A4判・228頁
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定価(本体14,000円+税)


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