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書評

DHが語る
インプラントがおもしろいほどわかる本

[著]岩井理子・小川洋一


 本書は、インプラントが長期にわたり良好な状態を保つために、歯科衛生士が知っておくべき知識がまとめられた著書です。インプラント治療に関係する専門的知識をかなり深く切り込んで解説していますが、タイトルにあるとおり、現役の歯科衛生士目線でわかりやすく表現されており、図解(著者の力作)によってすんなり頭に入ってきます。

 内容に関しては、まず、インプラント治療は天然歯とインプラントの共通点と相違点を理解する必要があること、患者が欠損に至った経緯を探ることによってリスクを予測できることを解説しています。また、X線写真の読影のポイント、メインテナンス時のチェックポイントも記述されており、これらは実践的でとても役立つ内容です。とくに、メインテナンスツールとして考案された改造ブラシは秀逸で、私も日々の治療でお世話になっています。

 このように著者の経験が活かされた知識は、この先、歯科衛生士として求められる知識ともいえます。

 また、インプラント治療を成功に導くためには、「感染と外傷力の2つを診る目を養い検証する必要がある」と述べています。本書では“力が及ぼすリスク” についてかなり詳しく検証されています。これまで、私たちがメインテナンスで考えてきた細菌感染への対応のみならず、咬合(力)に対して見る目をもつ必要があり、歯科衛生士もここまでの知識が求められる時代になったことを実感します。

 加えて、メインテナンス時に、みなさんも少なからずプラークコントロールに苦労した経験があると思います。それは、上部構造物の不自然な形態が一因といえます。本書では長期に良好な予後を獲得するには、最初からプラークコントロールしやすい歯冠形態でなければならないと書かれています。確かに、新しく装着される上部構造物が患者さんによって簡単にメインテナンスできない形態であれば、得られる結果もよくありませんから、上部構造物は適切な形態を作る必要があります。

 「メインテナンスは、生物学的幅径や埋入深度で決まってくる」。このことは、歯科衛生士も十分に理解しておくべきであり、メインテナンスは治療計画の段階から始まっていることを本書が教えてくれます。

 近年、インプラント治療は広く普及していますが、インプラント治療に携わる者は、解剖学などの基礎歯科医学、歯周病学、補綴学、口腔外科学などを統合した知識や治療技術が求められます。著者は、インプラント治療が長期的良好な経過を得るために、チーム医療の一員である歯科衛生士はどのように治療のマネジメントをアシストするかを考える必要があるとしています。

 これまでメインテナンスを受けもってきた歯科衛生士が、治療初期から参加し、将来考えられるリスクを回避するための意見ができる力をもつことは重要です。本書はそうした力を養える入門書であり、必読書といえます。

文:丸山美幸
松本歯科大学病院 インプラントセンター・歯科衛生士

DHが語る インプラントがおもしろいほどわかる本

DHが語る
インプラントがおもしろいほどわかる本

[著]岩井理子・小川洋一

A5判・152頁・オールカラー
定価(本体 3,200円+税)


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