いまこそ知りたいそろそろ知りたいデンチャーQ&A

書評

［編集委員］谷田部優・前畑香

義歯の基本からメインテナンスまでを詳しく学べる！
『いまこそ知りたいそろそろ知りたいデンチャーQ&A』

　定期的にメインテナンスに通う義歯が入っている患者さんは、口々に「私の子どものころからいまのような予防歯科があれば、入れ歯にならずに自分の歯で過ごせたと思う。とても残念です」と切々に訴えながら、熱心にセルフケアに励んでおられます。義歯の不自由さと、自分の歯のすばらしさを痛感されているのです。私は担当歯科衛生士としてそうした思いを受け止めて、日々、プロケアに取り組んでいます。

　歯の有無で噛む能力と認知症の発症率の関係を比較すると、1.9倍のリスクがあるという研究結果があります（平成22年厚生労働科学研究所：神奈川歯科大学）。義歯であっても、口腔粘膜などがセンサーの役割を果たして、きちんと脳に刺激を伝えることができるそうです。

　超高齢社会の現在、「健康寿命の延伸」が注目されています。「健康寿命の延伸」には、（１）栄養（口腔機能、食事）、（２）身体活動（たっぷり歩く、ちょっと頑張って筋トレ）、（３）社会参加（お友だちと一緒に食事、前向きに社会参加）のバランスを保つことが大切だといわれています。口腔機能がしっかりしていれば、楽しく会話をしながら食事ができ、運動をしても体のバランスがとれて転倒しにくくなります。

　「残っている歯は守る。失っていれば義歯を勧める」。歯科衛生士は、こうした役割を担う職業だと感じます。

　そこで読んでおきたいのが、本書『いまこそ知りたいそろそろ知りたいデンチャーQ&A』です。義歯の構造、工程、準備する器材などについて、具体的な写真と詳細で丁寧な内容が詰め込まれています。即、アシスタントワークに役立つと思います。本書を読んで、義歯は究極のオーダーメイドで定期的なメインテナンスが大切だと再認識しました。

文・渋川理絵
神奈川県・堀元歯科医院・歯科衛生士
[DHstyle 2016年12月号掲載]