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書評

デンタルダイヤモンド増刊号 『エキスパートから学ぶ! CR修復の超レベルアップ30』

[編]
保坂啓一(徳島大学大学院)
菅原佳広(月潟歯科クリニック)
田代浩史(静岡県開業)


日常臨床の引き出しを増やすレベルアップに最適な一冊

 21世紀に入り、コンポジットレジン(以下、CR)による自費診療が普及し始め、国内メーカーからも保険適用外のCRが提供されるようになった。この時期から臨床に取り組み始めた歯科医師にとっては、CR修復による審美歯科治療が認知され始めていたとはいえ、当時のオピニオンリーダーからはネガティブな評価を聞くことも多かったと思われる。
 実際にCRを用いてみると、その高いパフォーマンスに驚き、患者もかつてあり得なかったような新たな治療法に驚くことを経験するだろう。そして現在、保険診療のみでCRが提供されていた時代から進化し、適応症例は拡がり、自費診療に用いられるようになり、医院経営にも貢献するようになった。そして、CR修復は、単に審美性が高いだけでなく、MID(最小限の侵襲による歯科治療)を牽引する治療法であり、患者からの「できるだけ歯を削りたくない」という要望にも応えられるものとなった。
 本書の執筆陣は、CRがその地位を確立し始めた時期に臨床家となり、研究や臨床に邁進してきた気鋭の先生方である。当然、保険診療や従来の修復治療の枠に留まらず、CRの適用拡大を模索してきた先生方であり、さまざまな工夫や術式を活用して臨床応用されている。
 内容も、接着や色調再現、仕上げ研磨など、基本的な臨床手順でありながら、すべての項目で新たな知見を得られ、日常臨床のさまざまな状況で活用できる内容に満ちている。日常臨床においては、そうした引き出しの多さが重要である。たとえば、「CRの表面張力を利用する」という填塞技法は、われわれが無意識のうちに行っている方法かもしれないが、とても秀逸な表現であり、今後の教科書にも記載されるべき内容ではないだろうか。
 基礎的な項目においては、臨床に直結する最新の研究成果が整理されている。これらの項目からも、執筆者の熱い想いが感じられる。古典的な研究テーマと思われがちであるが、最新の情報に触れ、臨床におおいに活用いただきたい。
 本書を読み進めると、各執筆者のCR修復に対するこだわり、治療の質の向上のための強い想いが感じられる。単に、スキル習得という目的だけでなく、CRに対して、また歯科治療に対しての、ものの見方や考え方を再考する機会になる。
 CRが大好きな筆者としては、CRの進化を感じて、とてもうれしい気分となった。

(文・田上順次/東京都・青山クオーツデンタルクリニック)
[デンタルダイヤモンド 2022年7月号掲載]

デンタルダイヤモンド増刊号 『エキスパートから学ぶ! CR修復の超レベルアップ30』

デンタルダイヤモンド増刊号 『エキスパートから学ぶ! CR修復の超レベルアップ30』

[編]
保坂啓一(徳島大学大学院)
菅原佳広(月潟歯科クリニック)
田代浩史(静岡県開業)

A4判変型・156頁
小社より好評発売中!
定価(本体5,400円+税)


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