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書評

包括的歯科治療で審美と機能を極める

【執筆】田ヶ原昭弘(愛知県開業)


時代はMI(Minimal Intervention)から
OI(Optimal Intervention)へ

 私を含めた、後期高齢者と呼ばれる年齢以上の歯科医師が学生時代に学んできた歯科治療は、“一歯一単位の治療”であった。そのため、術後どのような経緯を辿るのかを診ることはなく、術後のトラブルの状況を精査し、その原因を考察することもなかった。
 一方、1960年代後半にModern Dentistryと称し、米国から“一口腔一単位の治療”の重要性と治療法が伝えられた。また、咬合器を始め種々の機材が導入されるようになった。いわゆる、“オーラルリハビリテーション”の始まりである。この治療法の目的は、補綴治療を全顎的に行い、咬合の改善と安定化を図ることであった。そのため“オクルーザルリコンストラクション”と呼ばれた。しかし、当時の咬合に対する考え方は機械的な咬合であり、限界運動から考察したものであった。こうした治療法を経て、現在では各治療分野が著しい発展を遂げていることから、チームアプローチによって適切な総合診断ができ、良好な “Longevity”の達成が可能になると考えられる。
 しかし、わが国の歯科臨床の現場においては、専門医同士の連携が難しいのが現実である。であれば、一般臨床医が総合的診断力と治療技術を幅広く身につけ、そのうえで限られた分野で専門医とチームアプローチを実践していくことがベターなアプローチであろう。このような対応を、“インターディシプリナリー・アプローチ”と呼べるのではないだろうか。
 本書には、著者の田ヶ原昭弘先生が長年にわたり包括的歯科治療に携わるなかで培ってきた、数多くの経験と検証の積み重ね、そして歯科臨床に対する熱い思いが込められている。
 第I章では、包括的歯科治療の重要性について参考症例を通して強調されている。第II章では診査・診断・治療計画について、歯と歯列だけでなく、顔面や口腔内全体を診ることの重要性を述べられている。とくに第II章-3では、田ヶ原先生が考案・開発された「TOPアナライザー」の詳細が書かれている。第III章では、包括的歯科治療の進め方、第IV章では、「顔面の審美から包括的歯科治療」と題して、第III章の各項目についてさらに考察されている。
 本書は、審美と機能を極めるための包括的歯科治療の進め方が、より実践的に身につけることができるすばらしい書籍であり、次世代を担う先生方はもちろんのこと、包括的歯科治療を数多く経験されてこられた先生方にも、ぜひ読んでいただきたい。
 最後に、歯科臨床に対し、誠実で熱い思いをもって本書を上梓された田ヶ原先生を仲間にもてたことを誇りに思う。

(文・本多正明/大阪府・本多歯科医院/日本臨床歯科学会)
[デンタルダイヤモンド 2020年7号掲載]

包括的歯科治療で審美と機能を極める』

包括的歯科治療で審美と機能を極める

【執筆】田ヶ原昭弘(愛知県開業)

A4判/188頁/オールカラー
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定価(本体12,000円+税)


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