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書評

包括的歯科診療入門 現象と時間の視点から

[著]小川廣明


30年間にわたる基礎の積み重ねの結晶

 著者の小川廣明先生とは、ずいぶん以前に一緒に勉強させていただいた時期がありました。そのころ、夫の昌秀は、小川先生の臨床への真剣さと正確な臨床手技を高く評価していました。その後も長い間地道に努力されてきた結果がこの『包括的歯科診療入門』を発刊するに至ったのでしょう。小川先生の継続した努力に敬意を表します。

 医科の臨床において易しい学科はどこにもないと思いますが、歯科臨床は難しいものです。著者は歯科臨床への心構えを、「基本に忠実に、そしてその積み重ねが包括的歯科臨床になり、GPは1つの秀でた手技よりも歯科治療全般にわたる平均的な手技を持つこと」が重要であると説いています。

 小川先生は、病態を科学的に診断し、個体差を考慮しながら炎症と力のコントロールを行われますが、力のコントロールの複雑さには、つねに悩み、試行錯誤されています。

 また、CT、MRI、下顎運動解析機も使用し、臨床を科学として捉え、さまざまな角度から検証し、時間軸で追い、考えられるあらゆる手技を使ってダイナミックに修復されており、これこそまさに包括歯科臨床といえます。さらに、そうした日々の臨床の長期経過を見ることできるのが、本書の魅力の1つです。

 本書は、一臨床家が1つずつ基本に忠実に積み上げてきた結果の、30年間にわたる膨大な実績を記した1冊です。そしてそれは、一人ひとりの患者と誠実に向き合った結果でもあり、多くの先生方に手本としていただきたいと思います。

CONTENTS
第1章 なぜ包括的歯科診療なのか?
      なぜ基礎が重要なのか?
第2章 包括的な視点から病態を診断するための
     3つの柱
第3章 [Ⅰ] 病態分析
     個別的診断/総合的診断
第4章 [Ⅱ] 炎症と力
     炎症のコントロール/力のコントロールは
     どこまで可能か
第5章 [Ⅲ] 時間軸
第6章 包括的歯科診療における修復治療
第7章 咬合崩壊と咬合再構成
第8章 包括的歯科診療を実践するには
第9章 フォローアップからみる経年的変化

(文・筒井照子/福岡県・筒井歯科医院)
[デンタルダイヤモンド 2018年6月号掲載]

包括的歯科診療入門 現象と時間の視点から

包括的歯科診療入門 現象と時間の視点から

[著]     小川廣明

A4判・244頁
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定価(本体13,000円+税)


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