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書評

歯科からはじめるアンチエイジング栄養学

[著]森永宏喜


栄養療法学の第一歩を踏み出すのに最適な一冊!

 私が歯科疾患と食生活のかかわりに興味をもったのは、いまから5年前、『食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食 その身体への驚くべき影響』(Weston A. Price著)という本がきっかけでした。その内容は衝撃的で、食生活の変化が人間の身体、とくに口腔内のう蝕や歯周病、歯列不正に大きく影響するという内容でした。

 その後、人類の進化、う蝕の歴史、免疫や腸内細菌の分野に行き着き、最終的に「オーソモレキュラー・ニュートリション(分子栄養学)」に辿り着きました。当初は医科向けの講義が多く、血液検査データの読み方など歯科医師にはかなりレベルが高い内容だったのですが、非常に奥が深く、今後必ず歯科にもこの知識を活かした治療が必要になると確信しました。

 そして2016年に、本書の著者の森永宏喜先生が代表を務められている「オーソモレキュラー・デンタル(OMD)」が発足し、いち早くオーソモレキュラー栄養療法を歯科に取り入れて実践している伊藤夕里亜先生(イトウ歯科クリニック)や森永先生の講義を拝聴しました。

 血液検査データから患者さんに必要な栄養素を読み解き、症状が改善していく数多くの臨床ケースを拝見し、私の患者さんのなかにも症状が共通するところがあり、もしかすると栄養療法を行えば改善したのかもという思いも湧きました。そして、完全なる実践とまでとはいきませんが、私の診療室でも徐々に食事指導や栄養療法を取り入れつつ、現在進行形で勉強中です。

 森永先生の著書としては、一般向けの『全ての病気は「口の中」から!』(さくら舎)に次ぐ一冊が本書です。オーソモレキュラー栄養療法に関する解説から始まり、口腔内に本当に必要な栄養素をそれぞれ解説され、とてもわかりやすい項目順で構成されています。

 いままでは口腔内に起きた疾患を治療するか、止めるか、もしくは歯磨きや定期的メインテナンスのみの予防歯科だけを行ってきたわれわれ歯科医師にとって、栄養療法で歯科疾患を改善し、予防していくという考えは、なかなか入りづらい分野かもしれません。しかし、新陳代謝により、身体のほぼすべての細胞はおよそ3ヵ月〜半年で、新しく生まれ変わっています。とくに口腔内組織のターンオーバーのスピードは早く、食生活の乱れが最初に歯科疾患として現れるといっても過言ではありません。本書にもあるように、まさに「人は食べたものでできている」のです。

 歯科にかかわるすべての方々に、本書を読んでいただき、オーソモレキュラー栄養学に興味をもっていただく、よいきっかけになればと思っています。

(文・青島徹児/埼玉県・青島デンタルオフィス)
[デンタルダイヤモンド 2019年8月号掲載]

歯科からはじめるアンチエイジング栄養学

歯科からはじめるアンチエイジング栄養学

[著]     森永宏喜

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