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書評

歯科専門税理士が教える 年商1億円医院の設計図

【著】山下剛史(税理士法人キャスダック)


歯科医院によくある“人”の問題の特効薬

 この書籍は、「開業して数年経ったが売上が増えない」「向上意欲はあるが医院の経営数字の目標基準がわからず不安を感じている」という先生に福音となる一冊です。私も、開業して10年間は患者数の増加が緩やかで、思うようにお金が残らず、いつも自分のしていることは正しいのか思い悩む時期が続きました。
 豊かな生活を送れる「幸せな年収」とはいくらかと考えれば、開業医の感情的な幸福度は「歯科世帯年収が2,000万円」。ゆえに、本書のテーマである年商1億円を目指そうというのは理にかなった目標ではないでしょうか。
 25年前、売上7,000万円弱のときに、頑張って600万円の売上を積み上げたにもかかわらず、なぜか手取りは減少していて落胆したことがありました。当時の私はスタッフに関するコストは節約すべきと考え、給与は低めで教育などの人材投資もまったく行いませんでした。当然、次から次にスタッフは辞めていき、医院の雰囲気も最悪な時期でした。しかし考えを改めて、私自身あらゆるセミナーに参加し、それをスタッフにも推奨し、積極的に投資を行いました。その結果、事態は急激に好転します。投資は経営におおいに役立つといえるでしょう。
 本書では「広告」「人材」「器材」への投資を勧めています。経営の基本は新患者数を増やすことですが、これは「広告」です。そして継続して来院していただくような「ファン患者」を作るのは院長だけでなく、周りのスタッフの対応が必要となるので、そのためには「人材」への投資が必要だと説かれています。そして、コアなサービスは歯科医療技術そのものなので、基礎医療や最新医療を提供するためには、「器材」への投資が必要となります。
 しかしお金は無限ではなく、過去と未来のバランスも考えないといけません。このことは開業した院長はみんな意識していますが、基準がさっぱりわからないのではないでしょうか?
 この書籍ではその基準値を「年商1億円の医院の設計図」というかたちで提案しています。これは、著者の山下剛史氏の税理士事務所において、年商1億円を達成している歯科医院から導き出された平均値となります。
 まず自院の経営上の数値を設計図に記入し、基準値と比べながら、今後、どのくらいの投資をするかを考えます。ただ数字の羅列を眺めるのではなく、本書内の図や表を参照しながら、戦略を考えることが年商1億円への第一歩です。
 その他にも、本書にはそれぞれの投資を成功させるためのアドバイスや、実例が網羅されており、歯科医院の経営を真摯に考えておられる院長にはたいへん役に立つでしょう。

(文・坂井秀明/大阪府・坂井歯科医院)
[デンタルダイヤモンド 2019年7月号掲載]

歯科専門税理士が教える 年商1億円医院の設計図

歯科専門税理士が教える 年商1億円医院の設計図

【著】山下剛史(税理士法人キャスダック)

A5判・204頁
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定価(本体3,600円+税)


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