書評
歯周病と全身疾患 ─最新エビデンスに基づくコンセンサス
[監修]特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会
[編集・執筆]二階堂雅彦、築山鉄平
EFP/AAPコンセンサスを踏襲してJACPの見解を網羅!!
2012年にヨーロッパ歯周病学会(EFP)とアメリカ歯周病学会(AAP)は、「歯周病と全身疾患」に関するワークショップをスペインで開催し、「Periodontitis and Systemic Diseases」としてまとめられ、2013年の春に「Journal of Periodontology」の増刊号として出版された。
当初、日本臨床歯周病学会が翻訳を行い、臨床家の益するものにしたいとの発想から、ある出版社に書籍化の打診をしたが、「全訳するには臨床家だけでは困難であり、時間もかかるうえに版権の問題もある」とのことで、この計画は実行に移すことができなかった。しかし、これを“下敷きとして、その後に得られた新しいエビデンスを加えて”(「刊行にあたって」より引用)、今年4月、日本臨床歯周病学会監修のもとに本書が上梓された。
全身疾患関連の書籍や訳本は、読んでもよく理解できないということがあるが、本書はひと味違う。全140ページの多くに図表があり、とてもわかりやすく、読みやすい。数えてみると図だけでも94点ある。ベースとなったEFPとAAPによる『歯周病と全身疾患』では、200ページを超えるまとめの中で、図表がわずかに13点しかないことと比較しても、いかに理解しやすい書籍であるかがわかる。
内容は、以下の10項目から構成されており、このうちの3項目には臨床例が提示されている。
第1章 歯周病の病因論
第2章 歯周病と全身疾患の関連メカニズム
1.歯周病と糖尿病
2.歯周病と心血管疾患・アテローム性動脈硬化
3.歯周病と周産期合併症
4.歯周病と肥満・メタボリックシンドローム
5.歯周病と関節リウマチ
6.歯周病と肺炎・慢性閉塞性肺疾患
7.歯周病とその他の疾患 (1)慢性腎臓病
8.歯周病とその他の疾患 (2)認知症
9.歯周病とその他の疾患 (3)がん
本書が理解しやすい理由は多々あるが、とくに「(疾患名)とは」の項目に、多くのページを割いているためだろう。また、それぞれの執筆者が総計321もの引用文献を深く読み込んでいることが文章のあちこちから感じられる。これは、執筆者の多くが海外留学経験者であることからも頷ける。
このような臨床家に理解しやすく素晴らしい書籍を、日本臨床歯周病学会の監修として出版されたことに対し、本企画を主導された日本臨床歯周病学会前理事長の二階堂雅彦先生と築山鉄平先生をはじめとする13名の著者たちに敬意を表するとともに、最近、話題となっている「歯周病と全身疾患」を理解するためには、お勧めの好著であろうと思われる。
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歯周病と全身疾患 ─最新エビデンスに基づくコンセンサス
[監修]特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会
[編集・執筆]二階堂雅彦、築山鉄平A4判変型・140頁・オールカラー
定価(本体7,500円+税)