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書評

コンプリートデンチャー 鈴木哲也のマスター1

[著]鈴木哲也・古屋純一


読めば必ず総義歯がうまくなる。

 著者は、たいへん人気のある講演者である。私も何度か受講させていただいたが、動画を取り入れてわかりやすいうえに、大切な部分を繰り返し、囁くような独特の話し方にいつも引き込まれてしまう。鈴木氏は教職者であるため、上から目線で難しい講義をするかと思いきや、義歯臨床に悩む一般開業医が日ごろ直面する問題をうまく捉えた講義を展開する。まさに、明日からの臨床に役立つ解決策を、いつもたくさん教えてくれている。

 鈴木氏が2011年に出版した『よい義歯 だめな義歯』(クインテッセンス出版)は、ベストセラーになったと聞いているが、当然のことであると思う。鈴木氏の講演がいかにわかりやすくとも、一度聞いただけでは覚えきれない。家に帰って『よい義歯 だめな義歯』を読み返し、臨床で実践し、また講演を聞きに行く、という繰り返しを経て、講演はいつも満席となり、書籍もベストセラーになったのだと思う。

 前著から6年ほど経過し、新しい書籍を期待していたのは、私だけではないと思う。なんとこの4月、その名も『コンプリートデンチャー 鈴木哲也のマスター1』が上梓された。ワクワクしながらページをめくると、“既製トレーの適合が最初のポイント”と目に入った。「あれ、今度は教科書的なものなのかな……」と肩透かしを食らいつつ読み進めると、手技を主体とした臨床的な物の見方、考え方が載っている。さらに、ポイントを的確に捉えた画像がうまく配置され、読みやすいレイアウトになっている。そのため、最初からじっくり読むのではなく、気になった項目をガバっと開き、目についた所から読み始めるのがお勧めである。

 私は、形から義歯を教わったこともあり、本書に載っている義歯の形を見ると、形がよく、たまらなくうれしい。私が大学を卒業し、現場に出て、初めて教わった言葉が「総義歯には総義歯の形がある」だった。いまでもこの言葉が大好きで、「作る歯科技工士さんによって義歯の形が違ってくる」、「総義歯は別に左右対称にはならなくてよいのだ」などと言われると、ガクッときて、もう読みたくない、聞きたくない、となってしまう。これは、私が正しいとか相手が間違っているとかではなくて、自分が信じてきたことや、自分の臨床実感と異なっているので、気持ちが受け入れないだけのことである。その点、本書は最高だ。どの写真もよい。ぜひ、読者は義歯の形を目に焼きつけてほしい。

 おそらく今後は、本書が鈴木氏の講演の中心になってくるだろう。講演を聞きに行って、帰って本書を読む。また聞きに行って、帰って本書を読む。しばらくは他の演者の話は聞かなくていいだろう。他の本も読まなくていい。鈴木哲也漬け、古屋純一漬けになっていれば、必ず総義歯はうまくなる。

文・村岡秀明
千葉県・むらおか歯科矯正歯科クリニック
[デンタルダイヤモンド 2017年9月号掲載]

コンプリートデンチャー 鈴木哲也のマスター1

コンプリートデンチャー
鈴木哲也のマスター1

[著]鈴木哲也・古屋純一

A4判・228頁・オールカラー
定価(本体12,000円+税)


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