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書評

有病者歯科治療ハンドブック 医科×歯科

【監/編]
和気裕之 (神奈川県開業)
依田哲也 (東京医科歯科大学)


安全な歯科治療を提供したい臨床医は必携!
臨床医目線でまとめられたハンドブック

 私たちの仕事は、超高齢社会の真っ只中にある。当然、何らかの病気をもつ患者に対して適切な対応が求められており、今後いっそうその重要性は高まってくるだろう。臨床においては、問診などにより患者の状態を確認して治療にあたるわけであるが、その患者が有病者であった場合、曖昧な知識で対応したくないと思われるはずだ。
 しかしながら、現場においては限られた時間で対応せざるを得ず、分厚い医学書や学生時代のテキストを開いてその答えを探すのは容易ではない。もし、日常臨床において最新かつ必要十分な情報を得られるハンドブックサイズの書籍があったとしたら、それはとても魅力的なはずだ。
 私たちは臨床において歯科疾患への対応だけでなく、心理的要因を含めた全身状態に対して、専門家として適切な助言を行う立場にある。それには、偏りのない知識を得る必要がある。本書の監修および編集委員代表を務められているのは、「歯科心身症」に対する臨床家のパイオニアとしてご活躍されている和気裕之先生と、専門領域はもちろんのこと、歯科治療におけるリスク対応についてできるだけ臨床医が適切に対応できるよう発信されている依田哲也先生であり、とても安心できる。
 本書では、歯科診療で遭遇する可能性の高い113の全身疾患が冒頭の目次にて検索できる。かなり広範囲の情報を取り扱っているにもかかわらず、非常に見やすくレイアウトされており、辞書というよりは、参考書のような感覚である。また、疾患の概要と歯科との関係についてまとめられている書籍は他にもあるが、本書には「問診票から」、「主訴の例」の項目があり、そこで調べた疾患がどのように現場で表現されるのかを確認することができる。過去にそういう訴えがあったなと思い返すような表現が適切に選択されており、疾患を調べる場面でなくても、その部分に目を通しながら、あれもこれも知らなくてはと、どんどん読み進めたくなる。
 私は総義歯臨床を専門とした歯科医師として仕事をしており、患者層に高齢者が多い。本来であれば、有病者に対する必要な知識が血肉となっているべきであろう。しかしながら、実のところなかなか難しい。出張が多い私のような仕事のスタイルの方でも、この本はチェアーサイドに持っていける。コンパクトなサイズで、患者の訴えから紹介先や紹介状の読み書きまでまとめられている。
 安全に歯科治療を提供したい歯科医療関係者がいま手にすることができる、最良のハンドブックとして本書をお勧めしたい。

(文・松丸悠一/東京都・Matsumaru Denture Works)
[デンタルダイヤモンド 2020年11月号掲載]

有病者歯科治療ハンドブック 医科×歯科

有病者歯科治療ハンドブック 医科×歯科

[監/編]
和気裕之 (神奈川県開業)
依田哲也 (東京医科歯科大学)

A5判・280ページ・オールカラー
小社より好評発売中!
定価(本体6,500円+税)


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