続・日常臨床のレベルアップ&ヒント67選
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36第2章 歯内療法 既根管治療歯のリトリートメントでは通常、修復物や補綴装置などの除去を伴い、とくにクラウンの除去と支台築造の除去を行うことが多い。根管充塡材は、所要性質の一つに除去可能なことがあり、ガッタパーチャポイントと根管シーラーは除去することを想定して作られている製品が多い。 一方、インレーやクラウンは外れないようにセメントで合着される。クラウン除去は、基本的に歯肉縁上で行うことが多く、直視でもよく見えるので比較的容易である。しかし、支台築造、とくにメタルポストコア(以下、メタルコア)は歯根の中央部または根尖1/3付近まで挿入されていることもあり、直視は困難でクラウン除去と比較して難易度が高い。メタルコア除去は、セメントで合着された補綴装置を取り除く処置であり、歯根破折や穿孔などを来すリスクがあるため、慎重な操作が求められる。しかも、それらの偶発症が原因で抜歯に至ることもあり、患者と術者双方にとって負担の大きな処置といえる。 近年の支台築造においては、ファイバーポストレジンコア(ファイバーコア)の有用性に加え、金属の価格高騰とファイバーコアの保険収載に伴い、メタルコアよりもファイバーコアが頻用されている。しかし、保険請求されている除去物は、依然としてメタルコアがファイバーコアを上回っている。 メタルコア除去には、以前から多くの器具が使用されてきた。本項では、メタルコアリムービング ダブルドライバーを用いた除去法1)を中心に、切削法や超音波振動法、リトルジャイアントを用いた方法2)についても紹介し、効果的にメタルコアを除去するコツについて解説する。 従来の切削法によるメタルコア除去は肉眼で行っていたため、象牙質の過剰切削による穿孔のリスクがあった。近年では、5倍速コントラに長いサージカルバーなどを装着し、マイクロスコープの拡大視野下でメタルコアを切削することにより、穿孔のリスクは大幅に減少した(図1)。しかし、すべての歯科医師がマイクロスコープ下で処置を行うわけではなく、多くの歯科医師がいまだに肉眼または拡大鏡を使用して除去しているのが現状である。 超音波振動法によるメタルコア除去は、従来からチェアータイムが長くなることが問題であった。近年、接着技術の進歩やセメントの進化により、メタルコアは以前より強固に合着されており、さらに除去に時間を要するようになった。 そのため、ダブルバイブレーションテクニック3)やエコーバックテクニック1)などを応用し、2方向から異なった波長の振動を加えることで効果的に除去する試みが行われている。 長いメタルコアが装着されている上顎前歯根尖のX線透過像に遭遇した場合、再根管治療を行うか迷うことがある(図2a)。しかし、根尖切除術は再根管治療を施し、症状に改善がみられない場合に行うのが理想である。 リトルジャイアントを用いたメタルコア除去2)は、象牙質を支点として歯根を根尖方向に押しながらメタルコアを引き上げる機序である(図2b)。日本歯科大学附属病院 総合診療科1  中山竣太郎 北村和夫 リトリートメントと支台築造除去の現状 切削法によるメタルコア除去 超音波振動法によるメタルコア除去 リトルジャイアントを用いたメタルコア除去01メタルコアリムービング ダブルドライバー を用いた効果的なメタルコア除去

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