う蝕の早期発見 透照診(transillumination test) 隣接面う蝕 臼歯部隣接面う蝕の発見8第1章 コンポジットレジン修復 う蝕は現在も感染症のなかで最も感染しやすい疾患の一つである。多くの人が生涯のうちに一度は罹患する病気と言われている。したがって歯科医院での定期的な予防処置や家庭でのセルフケアはとても重要である。また、国の医療政策上においてもメインテナンスや検診がいっそう重要視され、疾患の予防、早期発見、早期治療が望まれている1)。 隣接面う蝕とは、歯と歯の間にできるう蝕のことを指し、しばしば目に見えづらい部分に現れることがある。う蝕は歯の表面から見えないことが多く、定期検診などでの視診のみでは見逃されることが多いのが現実ではないだろうか。う蝕の90%は歯の表面下に隠れているといわれ、う蝕の早期発見のためには、歯の内部診査が必要になる。 う蝕の検査として視診、触診、X線検査は有用であるが、う窩のない臼歯部隣接面う蝕を探知するのは非常に難しい。ミラーでの視診、フロスを使用しての触診などを行うが、隣接面コンタクト部は歯同士が接触しており、直視することは不可能である。非常に時間がかかる割には精度が低い。 また、隣接面う蝕を「視診のみ」と「視診とデンタルX線検査を併用した場合」を比較した研究では、視診のみではデンタルX線検査併用の31%しか隣接面う蝕を検知できなかったとの報告もある2) 前述したように、視診では歯の内部の状況を見落とす可能性が高い。そこでX線検査は、歯の内部の情報を得るのに欠かすことのできない検査となっているが、最大の欠点として患者への被曝のリスクが挙げられる。 そこで有効に利用したいのが透照診である。 透照診とは、光の透過度や屈折状態を活用して、歯の内部の状態を診断する非侵襲的な検査法である。この光の透過度や屈折状態を分析することで、歯の内部にう蝕や亀裂、破折などの異常があるかどうかを判断することが可能となる3)。透照診において、健全なエナメル質とう蝕のエナメル質の見え方の違いは光の透過率によって明暗の差が生じる。健全なエナメル質はその構造上、光を透過しやすい性質を有しているため、透過光は明るく見える。一方、う蝕によってエナメル質が侵されると、エナメル質の密度が低下することで透過率も低下して暗く見えるのが特徴である。 患者から「前歯の歯の間が黒いのはむし歯でしょうか?」という質問を受けることがあるが、表面のみの着色であれば内部は光を通すので、内部に及ぶ暗い影を見ることはない。とくに歯質が薄い歯や前歯部においては透照診が有効であり、隣接面う蝕の検査においても高い精度を誇る。歯質が薄い歯は透光性が高いため、透照診によって内部の異常やう蝕を観察しやすく、隣接面う蝕の診査に適している。また、前歯部は目視しやすい場所であり、透照診を用いることで微細なう蝕や病変を見逃すことなく検査することが可能である(図1)。 しかし、臼歯部では頰舌幅径が前歯に比べて大きいため、透照診は必ずしも容易ではない。デジタル光ファイバーのような一般的な可視光(図2)では埼玉県・COJI DENTAL OFFICE 吉野真弘01近赤外光(NIR Light)を用いた 臼歯部隣接面う蝕の診断
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