続・日常臨床のレベルアップ&ヒント67選
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はじめに TCの実際 TC導入242第10章 トピックス図❶ TCマスターカレッジHP 歯科医院の経営において、患者との信頼関係を築き、満足度を向上させることは極めて重要である。しかしながら、院長は診療や経理業務、スタッフ教育、歯科医師会会務、学会発表、論文執筆、セミナー・講演会、地域の行事などさまざまな業務を1人でこなさなければならないため多忙である。筆者の歯科医院では、2023年4月からトリートメントコーディネーター(Treatment Coordinator:略称TC)を在籍させてカウンセリングシステムを導入したところ、患者との信頼関係が向上し、満足度アップに繫がったと実感している。また、歯科医師や歯科衛生士の負担軽減、Google口コミ「高評価」の増加、自費率の上昇にも繫がった。何より筆者自身が院長としての仕事に専念できるようになった。本項では、その経験から当院の事例を紹介する。読者の皆様の一助になれば幸いである。 TCとは、患者と歯科医師の架け橋となり、双方にとって納得のいく治療を進めるための調整を行う職種である。当院では、歯科医師が計画した治療の説明や相談、治療計画の提案、費用・見積もりの提示、経理、スタッフ教育、スタッフ間での患者情報の共有など幅広い業務を担当している。 TC導入にあたり、当院ではスタッフ(歯科助手、歯科衛生士)に一般社団法人日本歯科厚生協会・TCマスターカレッジのTCレギュラーコースを受講してもらい、認定資格を取得することからはじめた(図1)。TCマスターカレッジは実践的なカリキュラムが特徴であり、臨床現場の即戦力となるスキルを身につけることができたと感じている。 スタッフがTC認定資格を取得できたら、TCによるカウンセリングシステムを当院に合わせて構築し、実践していくのみである。TC導入にあたってはさまざまな課題が見つかって苦労もすると思われるが、実際に勉強をしてきたTCの意見を取り入れ、諦めずに実践を続けることが成功するポイントと考える。 実際には、初診時(初診カウンセリング)、2回目の来院時(セカンドカウンセリング)、3回目の来院時(クロージングカウンセリング)、治療スタート後にも補綴カウンセリング、中間カウンセリング、最終カウンセリングを行っている。図2にカウンセリングチャートを示す。 当院ではカウンセリングチャートのように、原則すべての患者にTCによるカウンセリングを行っている。すべての患者にカウンセリングを行うことが、患者満足度アップに繫がる秘訣だと考えている。歯科医師が診療の合間にユニットサイドで行う説明は、医療行為に対する説明義務違反にならないための説明であり、患者が納得して治療を受けるためのわかりやすい丁寧な説明ではないと感じている。「歯科医師が行いたい治療説明」と「患者が納得して受けたい治療説明」のギャップを埋めてくれるのがTCによるカウンセリングである。TCによるカウンセリングは、原則カウンセリングルームで行っている。とくに、セカンドカウンセリングは1時間の予約を東京都・くどう歯科クリニック  工藤智也01トリートメントコーディネーターによる 患者満足度アップ

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