日本呼吸器学会が動き始めた【参考文献】01 高齢者の口腔衛生管理は国民的、時代の要請である具はどのようなものを使っているかを知る。4)長いかかわりを想定したとき、できるかぎりセルフケアの能力を高めてもらうことが何よりも大切である。基本は自分の口腔は自分で管理する姿勢である。このことを理解し、実践できるかどうかの評価を行う。5)なぜ歯磨きをするかを最初にしっかり伝える。6)適切な歯ブラシを紹介する。多くの患者は歯ブラシを購入するとき適切な判断基準をもっていない。しかし、清掃効率がよく、歯や歯肉を傷つけない毛の硬さが求められる。とくに、セルフケアがまったくできない患者にかかわるとき、痛みを与えたり、歯肉を傷つけてしまうと、次から口を開けてくれない。つまり、協力が得られないことに繫がるから十分に注意する。7)セルフケアのできる患者には目の前でブラッシングをしてもらい、個性的な手法や傾向をつかむ。必要に応じて手を添えてあげる。大切なことは絶対に否定的な言動は避ける。できることを誉め、できないところはどうしたらよいかをともに考える姿勢が大切である。8)清掃しにくいところからスタートする。どこに歯垢が残存しやすいかを自ら考えてもらいながら行う。術者として難しい部位を繰り返しアドバイスする。9)可能な状況であれば、術者が歯ブラシを使用して丁寧に模範的にブラッシングを行う。その際、歯ブラシの圧力、動かし方などを体感してもらう。10)歯磨き粉をつけないで、まず機械的・物理的に歯垢を丁寧に取り除く。最後に歯磨き粉を歯ブラシに適量付け、歯磨き粉の薬効を期待する。11)ここで必要に応じて補助清掃用具を使用する。歯間ブラシは非常に清掃効果が高いが、サイズを間違えたり、無理に押し入れようとすると出血させ、歯肉を腫れさせてしまうことがよくあるので要注意。12)次に、歯面研磨用のブラシやラバーカップにポリッシングペーストを塗布して研磨する。大切なことは“さっぱりした”という好印象をもってもらうことである。この体験はその後の受け入れを左右する。13)最後に、姿勢を正して水や薬用リンスで含嗽を1) 米山武義,相羽寿史,太田昌子,弘田克彦,三宅洋一郎,橋本賢二,岡本 浩:特別養護老人ホーム入所者における歯肉炎の改善に関する研究.日老医誌,34:120-124,1997.2) 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2024作成委員会:成人肺炎診療ガイドライン2024.日本呼吸器学会,東京,2024してもらうが、その際、顎を軽く引き、誤嚥させないように注意する。また、できるかぎり強くぶくぶくしてもらうことで、口腔機能の低下予防に繫がる。 セルフケアとプロケアの必要度の比率を 必要とするセルフケアとプロフェッショナルケアの比率を考え、トータルで100%になるように管理計画を立てることは、高齢者の口腔健康管理上の要件の1つである。なるべく患者の残存能力を活用することで、参加意欲や予防効果が高まることに加え、リハビリテーションの見地から手指および口腔機能の低下予防に繫がる。 多職種連携が超高齢社会における 高齢者は予備能力が不足しがちで健康を害することが多い。入院した場合、セルフケアを期待できなくなり、相対的に看護師によるケアの割合が高くなる。つまり、その病院や施設の態勢および看護師・介護職の関心や意識によって口腔衛生状態はかなり影響を受ける。口腔ケアの指示が積極的に行われる病院や施設であれば、口腔内に起因する感染症が抑えられるが、そうでないと誤嚥性肺炎や糖尿病の悪化などが危惧される。とにかく、多職種の連携と、病院や施設と在宅間の連携が口腔衛生管理の善し悪しを左右し、健康状態に影響を与える。 2024年4月、日本呼吸器学会から「成人肺炎診療ガイドライン2024」が発刊された。そのなかで、高齢者の肺炎の多くが口腔内の細菌によって発症し、重篤化する可能性が高く、とくに誤嚥性肺炎の予防には「肺炎球菌ワクチンと口腔ケアが車の両輪」と明記された。これは、高齢者の口腔衛生管理は単なる口腔の清潔度を意味するだけでなく、高齢者の命にかかわる問題であるというように国民の認識に変わっていく可能性を示唆している2)。つまり、歯科の新しい時代の幕開けを暗示している。225判断する問題解決の鍵
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