続・日常臨床のレベルアップ&ヒント67選
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なぜ高齢者の口腔衛生管理は重要か たかが歯ブラシ、されど歯ブラシ224第9章 高齢者歯科10080604020020406080100PII(%)GIBL*********1m***  *P<0.05 **P<0.01***P<0.0013mTIME図❶ 特別養護老人ホーム入所者における歯肉炎の改善に関する研究(参考文献1)より引用改変)2mいままで口腔衛生への関心が非常に高かった患者が、通院時に劣悪な状態に陥っているケースにときどき遭遇するが、このような場合には認知症を疑ったほうがよい場合がある。 たかが歯ブラシと安易に考えがちであるが、歯ブラシの選択を誤ったり、力の入れ方によっては、感染症を引き起こす可能性がある。つまり、抵抗力の低下した高齢者では、一過性でなく長期間、菌血症状態が続く可能性がある。とくに、免疫力低下者は注意が必要である。しかし、基本的な注意事項を守り、口腔衛生管理を実践することによって高齢者でも確実に歯肉炎が改善していくことが報告されている(図1)1)。 高齢者の口腔衛生管理を成功に導く流れと  長期的に対応するために、口腔衛生管理の対象となる患者が、①通院できるか否か、②コミュニケーションができ、指示が理解できるか、③要介護・要支援の認定を受けているか、④意識の有無はどうかなど、まずは多角的に知ることである。そして、概略的に峻別して対応を具体的に立てる。1)歯式を記録するときに、残根も含めてプラークが多量に残存している部位を強調して記録する。2)現在の口腔衛生状態を評価し、歯肉炎とともに歯周ポケットの値を記録し、それぞれの関係を考察する。加えて健康状態、疾病の有無、手指の巧緻性などを調べる。最後に疑いが少しでもあれば認知機能の評価を行う。3)患者の生活パターンをうかがう。いつブラッシングをしているか。1日何回行っているか。清掃用静岡県・米山歯科クリニック  米山武義 口腔内に生息する細菌は、主として歯の表面と補綴物の表面にバイオフィルムを形成し、歯だけでなく時に全身的健康に深刻な影響を及ぼすことがある。このことは口腔領域を専門とする歯科医師、歯科衛生士だけでなく、他の医療や介護職が気付き始めていることであり、歯科・口腔の専門職として積極的にリーダーシップを発揮しなければならない。 高齢者の口腔衛生状態を悪くしている  大きく分けて4つの要因が考えられる。1つ目は、口腔衛生状態やその管理に対する若いころからの無関心やセルフケアのスキルが劣っていることである。2つ目は、さまざまな補綴物や未治療の歯の形態が歯垢や食餌の停滞原因になったり、清掃効果を下げていることである。3つ目は、年齢とともに口腔機能が衰えることに加え、加齢および薬剤による唾液分泌の減少からくる自浄作用の低下が考えられる。最後の4つ目は、認知症の発症とその進行である。要因はなにかポイント01高齢者の口腔衛生管理は国民的、 時代の要請である

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