続・日常臨床のレベルアップ&ヒント67選
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咬合高径は現義歯の診断から150第6章 有床義歯図❶ 咬合床を用いて上下顎全部床義歯の咬合採得を行うことは難しい図❸a、b 現義歯の形態を見て高径について診断をする。本症例のように高径があきらかに低いと、形態に通常と異なる特徴が現れるab図❷ 現義歯装着時の顔貌所見。口角の位置や角度、赤唇の見え方、Willis法による計測、オトガイ部の緊張などから高径を判断する。本症例は顔貌所見からは高径が低いと考えられる図❹ 上下顎前庭間の距離の平均値はおおむね36〜40㎜といわれており、平均値と大きく異なる症例は高径の設定に問題がないかを慎重に検討する必要がある上下顎前庭間の距離の平均は…約36〜40㎜前後 全部床義歯臨床の成否を大きく左右する要因として挙げられるのは、咬合採得(顎間関係記録)だと考えられる。本項では、その成功にとって大切なポイントをお伝えしたい。 全部床義歯の咬合採得は有歯顎者の咬合採得とは異なり、口腔内に指標となる残存歯や咬合接触が存在しないことから難易度が高く、多くの歯科医師にとって難しいと感じられるステップである(図1)。そのため、咬合採得は1回で完全に採得することは難しく、複数回の確認や再採得が必要だとあらかじめ理解しておくことが大切である。 咬合高径を確認・決定する方法は数多く存在するが、決定的な方法は存在しないため、複数の方法やさまざまな観点から多角的に決定することが勧められている。そのなかで最も大きな失敗をしにくいと考えられる方法が、“現義歯を診断して決定する方法”である。つまり、現義歯が使用できているかどうか、現義歯を装着した状態の顔貌所見(図2)、義歯の形態不良はないか(図3)、平均値(図4)や患者の頭部の大きさなどと比較して大きな差はないか、水平的な顎間関係に大きな問題はないか、などを確認して最終義歯の高径を現義歯からどの程度増減するべきかを決定する。 咬合高径にはある程度の許容範囲が存在すると考えられるが、いま患者が使用できている現義歯はその許容範囲内に存在することが多いため、現義歯をよりよく改変するにはどの程度の増減が必要だろうか? という観点で診断することが重要である。大阪府・ハイライフ大阪梅田歯科医院  松田謙一 咬合採得は1回では終わらない01全部床義歯の咬合採得を成功させる 重要ポイント

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