続・日常臨床のレベルアップ&ヒント67選
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はじめに 3Dデータの取得と統合 バーチャルプランニング122第5章 インプラント 近年のインプラント治療では、補綴主導型の治療計画を中心とした新しいアプローチへと大きく転換している。口腔内スキャナー(Intraoral scanner:IOS)やコーンビームCT(Cone beam computed tomography:CBCT)などによるSTLやDICOM形式の3次元(3D)データ取得が容易となり、理想的なインプラント埋入位置を事前にシミュレーションできるようになった。さらに、その計画を忠実に反映するサージカルガイドを用いる“ガイデッドサージェリー”が幅広く利用され、フリーハンドによる従来法と比較して高い正確性や手術侵襲の低減、手術時間の短縮、術後合併症リスクの低減などが期待されている。一方で、ガイデッドサージェリーでは3Dデータの取得と統合(重ね合わせ)、ガイド設計、ガイドの支持・固定方法、ガイド製作工程、さらには術中操作といった多岐にわたる要因が最終的な治療結果に影響する。 本項では、ガイデッドサージェリーを安全かつ的確に活用するために、3Dデータの取得、治療計画とガイド製作、術中に起こりやすいトラブルとその回避法について解説する。 ガイデッドサージェリーの精度を高めるには、まずCT撮影と口腔内スキャンによる3Dデータ取得の質が極めて重要である。CBCT撮影では、ボクセルサイズ0.3~0.4㎜程度の解像度があれば顎骨の高さや幅、下顎管や血管、上顎洞などの重要な解剖学的構造との位置関係を正確に把握できる。ただし、撮影時に患者が動いてモーションアーチファクトが生じると画像全体が歪み、プランニングが困難になるため、患者の頭部を固定して安定した姿勢で撮影しなければならない。 撮影範囲(FOV)はインプラント埋入予定部位のみならず、下顎管や上顎洞といったリスク部位を包括する十分な広さを設定することが望ましい。フルマウスなど多数歯欠損や補綴物のアーチファクトが多いケースでは、スキャンテンプレートを使用し、CT上にマッチングポイントを加えたり、アーチファクトの影響がない部位にマッチングポイントを明示する(図1)。咬合させた状態で撮影するとソフトウエア上でのセグメンテーションが困難になるため、バイトプレートなどを使用して開口させた状態で撮影するなど、ケースに応じて工夫することでプランニングにより適した画像を得ることが可能となる。 口腔内スキャナーは、とくに少数歯欠損の症例で患者負担を軽減しつつ、高精度な口腔内3Dデータを迅速に取得できる利点がある。一方、フルマウスなど多数歯欠損や補綴物のアーチファクトが多いケースでは、まずシリコーン印象材で印象を採得して石膏模型を製作し、ラボスキャナーでスキャンした模型上でスキャンテンプレートやバーチャルワックスアップを作成してデータ化する。 こうして得られたCTのDICOMデータと口腔内スキャナー(またはラボスキャナー)によるSTLデータをプランニングソフトウエア上で正確に統合することで、サージカルガイド設計の精度と信頼性が格段に向上する。 近年の研究によれば、ガイデッドサージェリーは札幌医科大学医学部 口腔外科学講座  出張裕也01ガイデッドサージェリーによる インプラント埋入の勘所

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