図❸ 臨床的要件①(支台歯形態)軸面部と補助的保持形態をもたない本修復形態において、咬合面形態は非常に重要となる(左)。文献にて散見される支台歯形態(中央、右)を示す01 オクルーザルベニアを用いた臼歯部歯冠修復の特長と臨床的ポイント図❹ 臨床的要件②(接着・装着)本修復は接着による維持安定がポイントとなる。接着阻害因子の確実な除去を行い、引き続き、修復物の内面処理、確実な防湿下での歯面処理を行う971.支台歯形態と支台歯ビルドアップ 支台歯形態は、接着と相関して補綴物の長期安定を図る重要な要件である。本修復物の支台歯形成では、軸面部の形成と保持形態付与をほとんど行わないため、修復物の維持と抵抗は咬合面で担うこととなる。 材料強度を考慮した厚径を確保するとともに、修復物自体の挙動を制御し、力学的安定を図ることが最善策だと考えるが(図3左)、その方法として、解剖学的縮小形態の付与を推奨したい(図3中央)。咬合面の凹凸が抵抗形態となり、力学的安定性に寄与すると同時に、装着時のシーティングも安定する。 図3右の形態もオクルーザルベニアの文献2)で紹介される形態である。平坦で緩やかな咬合面形態は、咬合力を支える強固な構造となり、辺縁部の傾斜により、それを内側方向の力に変換する設計である。形成も比較的容易で臨床経過も良好とされるが、解剖学的縮小形態と比べて装着時のシーティングで、ずれが生じやすいため注意が必要である。 また、本修復での支台歯においては、①均一な削除量をもつこと、②緩やかな曲面で形成されていること、③補助的保持形態は不要とされることから、う蝕部を削除した後は、必ずレジン系材料にてビルドアップすることが求められる。2.接着阻害因子の除去と確実な接着操作 本修復方法は、接着による修復物の維持安定がポイントとなる。そして、その接着の大前提が接着阻害因子の徹底した除去である(図4左)。 とくに、部分被覆の支台歯にはプラークなどの複合的で固着した汚れが随所に残留するため、研磨性のある材料を用いた丁寧な機械的除去が望ましい。 図4に、修復物内面処理と歯面処理の概要を示した。修復物も製作時・試適時にさまざまな汚れが付着しているために確実な清掃が必要だが、修復材料が二ケイ酸リチウムのようなガラスセラミックスの場合、フッ化水素酸を用いた内面の粗造化と、その後の超音波洗浄によって清掃も完了できる4,5)。 引き続き歯面処理を行うが、レジンセメントの種類を問わず、エナメル質のエッチングと象牙質へのプライミングは必ず行うようにしたい4)。とくに、本修復形態はエナメル質を意図的に保存し、その高い接着性を利用するため、リン酸によるセレクティブエッチングは必ず行うようにする。 その他の接着操作は、メーカー指示を遵守するが、乾燥や重合には、とくに留意が必要である。また、すべての接着操作をラバーダム防湿下で行うことが望ましい。 オクルーザルベニアの臨床的要件
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