続・日常臨床のレベルアップ&ヒント67選
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【参考文献】図❷ 歯科用レーザーの種類と治療目的。各機種のレーザー光の特性からおもな治療例を示す。なお、Er,Cr:YSGGレーザーはEr:YAGレーザーと同様の効果を示すが、さらなる検証が必要とされる歯石除去窩洞形成根管拡大う■除去歯槽骨整形・切除歯根端切除知覚過敏処置歯肉・血餅表層蒸散表面吸収性Er:YAGレーザーNd:YAGレーザー組織深達性根管内除菌止血小帯切除麻酔効果ポケット搔爬歯肉切開・切除顎関節痛などの除痛歯肉色素沈着除去半導体レーザー炭酸ガス(CO2)レーザーNd:YAGレーザーのポケット内照射(100mJ 20 pps)高反応レベルレーザー治療(HLLT) HLLT:High reactive Level Laser Therapy細胞生存領域を超えた不可逆的な反応(光生物学破壊反応)を生じるレーザー強度を応用した治療・歯肉整形 ・小帯切除 ・歯肉の色素沈着・フラップ手術時の不良肉芽組織の除去・歯周ポケット内の蒸散・殺菌(歯石除去、根面の内毒素除去を含む)低反応レベルレーザー治療(LLLT)LLLT:Low reactive Level Laser Therapy細胞生存閾値内での可逆的な反応(光生物学的活性化反応)を生じるレーザー強度を応用した治療・疼痛緩解 ・血流の改善や促進 ・抗炎症 ・術後の創傷治癒促進・Photodynamic Therapy(PDT)図❸ レーザー光の反応レベルによる治療内容の違いと使用例。各レーザーにおいて、適用組織に対するファイバーやチップの選択、レーザー照射条件(パルスエネルギー[mJ]、パルスレート[pps]、出力[W])および的確な動かし方が治療効率を高めるポイントであるNd:YAGレーザー照射による上唇小帯切除(120mJ 30pps)01 歯科用レーザーを用いた歯周治療Er:YAGレーザー照射による根分岐部やポケット内の歯石除去(80mJ 10pps)破壊反応活性化反応1) 一般社団法人日本レーザー歯学会編:レーザー歯学の手引き.デンタルダイヤモンド社,東京,2015.2) 一般社団法人日本レーザー歯学会編:レーザー歯科治療のガイドライン2025.生存領域を超えた不可逆的な反応(光生物学的破壊反応)を生じるレーザー強度を応用した治療である。強力なエネルギーを狭い範囲に集中させ、その熱エネルギーで組織を切開したり、蒸散する破壊反応であり、多くのレーザー治療はこの使用方法である。 一方、低出力レーザー治療(LLLT)は、細胞生存閾値内での可逆的な反応(光生物学的活性反応)を生じるレーザー強度を応用した治療であり、低出力のレーザーを組織の賦活作用に応用する。おもに半導体レーザーでの光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)が歯周ポケット治療などに応用され始めているが、さらなるエビデンスの蓄積が待たれている。 以上の理解に加えて、歯科用レーザー機器の使用にあたっては安全管理が重要であり、患者や術者、補助者の保護めがねの着用、使用方法の遵守、管理区画の確保などを併せて徹底する。 歯科用レーザーは万能ではないが、使用するレーザーの種類に関する知識を深めることで、さまざまな治療への応用の可能性を高めることができる。めに低出力で使用する場合(LLLT)がある(図3)。 Nd:YAGレーザー(波長1.064㎛)も水への吸収が少なく、組織深達性(透過性)に優れ、熱の影響が深部に及ぶため、歯周ポケット内壁の蒸散(歯肉炎症のコントロール)、止血・凝固や軟組織の切開、歯周外科治療のフラップ手術などに使用される。 炭酸ガス(CO2)レーザー(波長10.6㎛)は表面吸収性で水への吸収性が高く、軟組織蒸散による止血効果に優れているとともに、軟組織の切開などにも使用される。 Er:YAGレーザー(波長2,94㎛)も表面吸収性で水への吸収性が高く、軟組織や硬組織の蒸散能力に優れている。う蝕の除去や歯石除去、歯周ポケットの軟組織の蒸散や歯周外科手術、インプラント周囲炎の治療など広い範囲で応用されている。 近年新たに加わったEr,Cr:YSGGレーザー(波長 2,78㎛)も表面吸収性で水への吸収性が高く、歯質や骨の切削、歯石除去が可能なレーザーで、基本的にEr:YAGレーザーと同様の効果を有する。しかしながら、効果については今後のさらなる検証が必要と考えられる。 各種レーザーの出力による 効果の違いの基本的な考え方 出力の違いを利用した2つのレーザー治療のタイプがある。高出力レーザー治療(HLLT)は、細胞79 おわりに

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