歯の移植・再植Q&A 天然歯の有効利用からトラブル回避まで
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症例選択 Q.17 どのような症例で意図的再植を行えばよいでしょうか。図❶ 根管外バイオフィルムa:初診時CBCT。根尖部に大きな骨欠損(矢印)b:抜去した歯のMB根根尖部。根管口から分岐部側に黒色のバイオフィルム(矢印)図❸ 近遠心根が近接した分岐部への穿孔。初診時X線写真。近心根尖から分岐部に骨欠損(黄矢印)。分岐部に穿孔(赤矢印)abaa図❹ ルートセパーレションして近遠心根ともに意図的再植を行った症例a:術前(根管充塡直後)b:再植後1.5年MB図❷ 根尖孔から溢出したファイル(矢印)bb91歯を保存するためには意図的再植法か歯根端切除術、大臼歯ではヘミセクションやトライセクションのいずれかを検討することになる。 歯根端切除術では神経や血管を損傷せずに手術できること、原因となっている歯根に器具が届き適切な処置が行えることが条件となる。下歯槽管やオトガイ孔が骨欠損に近接していたり、上顎大臼歯の口蓋根など器具が届かず視野も確保できなかったりすると、歯根端切除術は難しくなる。 侵襲の程度は、歯根端切除術より意図的再植法のほうが小さく、手術時間も短いことが多い。とくに病変の全周が厚い骨壁で囲まれている場合には、歯根端切除術は骨の削除量が多く、術後の疼痛や腫脹が大きくなる。 意図的再植法では口腔外で歯に対する処置を行うため、出血はなく歯根は多方向から観察可能で、視野も明瞭となり、原因の特定、根尖部の切除や逆根管充塡は確実に行える。しかし、髄床底への穿孔で歯根が近接して分岐部が離開していない場合(図3)など、口腔外に歯を取り出しても穿孔部への逆根管充塡が行えないこともあり、つねに原因部位への器具到達性に優れているとは限らない。2)意図的再植法の欠点 意図的再植法では、抜歯時に歯根を破折させたり、歯根膜や歯槽骨を著しく損傷させたりすることが最大の失敗原因となる。多根歯の歯根離開、歯根の彎曲や大きな陥凹にはとくに注意が必要となる。歯根膜の損傷は抜歯時の機械的損傷だけでなく、口腔外での処置時間が長くなり、歯根膜が乾燥すると骨性癒着や置換性吸収を生じるが、生理食塩液や歯の保存液にときどき浸漬することで、乾燥による障害を発生させることなく、根尖部の切除や逆根管充塡は十分に可能である。 大臼歯など歯根が大きく離開していると、抜歯した瞬間に抜歯窩が収縮して、抜歯した歯をもとの位置に戻せず、根尖部を必要以上に切除しなければならないことがある。このような症例ではルートセパレーションして1根あるいは2根に意図的再植を行うことを検討する(図4)。

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