宮地秀彦はじめに 2022年12月に書籍『“失敗ゼロ”のCR修復』を脇 宗弘先生とともに上梓して以来、直接CR修復をはじめとする接着修復の臨床環境は、さらに変化してきました。材料・器材の進歩、マイクロスコープやラバーダム防湿の普及、SNSによる国境を越えた症例共有などによって、いまや接着修復は限られた術者だけの特別な選択肢ではなく、多くの臨床家が日常的に取り組む治療となりつつあります。 一方で、接着修復は「優れた材料を使いさえすれば成功する」治療ではありません。診査・診断、う蝕除去、歯髄や周囲組織への配慮、防湿、接着操作、形態回復、咬合への対応など、連続する判断と手技の質が、結果を左右します。とくに健全歯質、なかでもエナメル質をいかに守るかは、歯の長期的予後に直結します。われわれが長年掲げてきた「SAVE THE ENAMEL!!」には、単に削らないという意味を超え、歯の未来を見据えて個々の介入を慎重に選択する姿勢を込めています。 本書は、直接CR修復に留まらず“接着修復”をより広い視点から捉え直し、基礎から臨床応用までを整理したもので、前著と同じく月刊デンタルダイヤモンド誌での連載がもとになっています。今回は脇先生に加えて、福岡市でご開業の江川光治先生、東京科学大学・朝日大学非常勤講師の高垣智博先生にも共同執筆者として加わってもらいました。宮地(Miyaji)、江川(Egawa)、脇(Waki)、高垣(Takagaki)のイニシャルから「MEWT」と名づけたこのユニットは、接着修復の現在地とこれからを語り合い、共有し、発信するための共同体であり、立場や臨床背景の異なるこの4名によって、一般臨床、保存修復、接着研究、臨床教育などの視点から、解説と議論を重ねて参りました。そこに今回書き下ろした追加項目を加え、臨床の流れに沿って再構成したことで、本書は連載時の熱量を残しつつ、より実践的かつ多角的な内容になったと自負しています。 若手の先生方には確かな基本を身につける道標として、経験豊富な先生方には日々の臨床を再考するきっかけとして、それぞれ必要な場面で手に取っていただければ幸いです。本書が一人でも多くの患者さんの歯を守り、長く機能させるための一助となることを願っています。
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