【参考文献】1) 高原昭男:医療現場の5S活用ブック 初版.日本能率協会マネジメントセンター,東京,2016.図❹ 印象体を取り出し技工指示書の番号を記入する図❺ 石膏を注入後、硬化する前にラベルを乗せる図❻ 石膏模型の番号を確認し、シリコーンバイトとともに梱包をする126刺しにも注意が必要である。4)石膏注ぎ 消毒完了後、印象体を水洗して水分を飛ばし、石膏を注入する準備をする。この際、印象体に記入した番号とラベルの番号が一致していることを確認する。石膏を注入後、硬化する前にラベルを乗せる。乗せるときにも番号を再度確認する(図5)。 歯科医院では石膏注入後に先ほど記入した付箋や針金荷札を切り離して石膏に乗せることで、模型の識別化が容易になる。5)梱包 石膏が硬化した後、印象から石膏模型を外す。外した模型のラベルと印象体に記入した番号を再度確認してシリコーンバイトとともに梱包する(図6)。確認作業を複数回行うことで取り違え防止になり、ミスに気づいた場合にも適切に修正が可能になる。 この後、技工室や歯科技工所において技工作業に取り掛かるが、作業を開始する前に技工指示書と模型などをよく見て製作部位、製作物に誤りがないことを確認をするのも重要である。5.職場の5S 技工室では受付時以外でも取り違えが発生することがある。おもには技工物製作作業中に別の模型の混入や紛失、技工物の製作間違え、納期の間違えなどである。 これらの原因も思い込みや確認不足、技工机の整理整頓不足などに起因する。模型は症例ごとに管理して別の模型が混入しないように注意し、技工物の品目や納期は何度も確認することが必要である。こうしたヒューマンエラーの予防には5Sが有効である。 5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ、習慣化」のことである。技工机を「整理」「整頓」「清掃」することで無駄な物が排除され、物の定位置化ができる。これにより模型や技工指示書の管理が容易になり、ヒューマンエラーの発生を抑えることができる(5Sの詳細はp.190〜191を参照)。 そして、技工室全体、歯科医院全体で行うことで作業スペースの確保や物の見える化ができ無駄を排除することができるようになる。 「清潔」な環境が継続「しつけ、習慣化」できるようになれば業務の見える化が実現し、快適でミスの少ない職場環境が整っていく。 これまで、歯科技工士業務内でのインシデントとそれに対する防止策を述べてきた。 最も重要な対策は、安心安全な歯科医療を提供するため常に業務フローを見直し、無駄を排除しながら改善を行い、PDCAサイクルを回していくことであろう。本項の要点 ● 各業務マニュアル(とくに受付業務マニュアル)でのワークフローの確立はたいへん重要である。 ● 定期的な業務マニュアルの見直しとスタッフ全員への周知徹底が必須である。 ● インシデントはヒューマンエラーであるため、5S活動を習慣化することで多くを防止できる。おわりに
元のページ ../index.html#12