抜歯、歯周外科処置:歯肉の血管が開放され、細菌が侵入しやすくなる歯石除去、スケーリング:炎症のある歯肉に器具が接触し、出血を伴う歯周病:慢性的な炎症により、血管が露出しやすい状態にある ブラッシング、デンタルフロスの使用:とくに歯周炎のある部位では日常の根尖病変:歯根の先端から病巣が血管に波及することもある清掃でも菌血症が起こる図❶ 歯原性菌血症の原因となるおもな状況961.位相差顕微鏡による早期把握の意義 歯周組織や歯の処置を契機として、口腔内の細菌が血流に侵入する「歯原性菌血症」は、免疫力が低下した患者さんや基礎疾患を有する患者さんにおいては、重大な全身疾患を引き起こす引き金となり得る問題です(図1)。 位相差顕微鏡を用いて歯肉縁下プラーク中の細菌の密度や活動性、さらにはスピロヘータなど病原性の高い細菌の動態をリアルタイムに観察することで、菌血症のリスクが高い状態を視覚的に把握できるため、歯科治療の前処置や全身管理との連携に活用できます1)。 とくに、歯周病が進行している患者さんにおいては、わずかな刺激でも細菌が血中に流入する可能性があり、日常的な行動や軽度の処置でも菌血症を起こすリスクがあります。位相差顕微鏡によって細菌叢の活動性が高いことが観察される場合、治療の優先順位や術前の抗菌薬管理を考慮する重要な根拠となります。2.全身疾患との関連性 歯原性菌血症が原因となる代表的な全身疾患を以下に示します(図2)。1)感染性心内膜炎 人工弁や先天性心疾患をもつ患者さんは、口腔由来の細菌が心内膜に付着し、重篤な炎症を起こすリスクがあります2)。米国心臓協会(AHA)では、リスクの高い患者さんに対し、抜歯などの侵襲的処置前に抗菌薬の投与を推奨しています。1歯原性菌血症と全身疾患歯原性菌血症と全身疾患
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