1ab生物学的幅径付着上皮輪状線維歯肉線維歯根膜(歯周■帯)セメント質図❶ 健康な歯周組織およびインプラント周囲組織の生物学的幅径の違いa:歯周組織b:インプラント周囲組織歯肉溝0.69mm上皮性付着0.97mm結合組織性付着1.07mm上皮組織の幅約2mm結合組織の幅約1〜1.5mm上皮層輪状線維走行しているが、咬合性外傷のような過剰な力が加わると動揺度の増加やX線写真上で歯根膜腔の拡大を生じたりするなど臨床的に目視することができる。天然歯ではこの歯根膜の働きにより咬合圧を調整しながら嚙むことが可能である。また、歯根膜組織は豊富な血管や神経が存在し、線維芽細胞・セメント芽細胞・骨芽細胞・未分化間葉系細胞のような間葉系細胞、マクロファージ・リンパ球・破骨細胞などの血球系細胞などの細胞成分も存在している。歯根形成時に出現したHertwig上皮■(Hertwig's epithelial sheath)が歯根完成後に分断化された歯根膜に特異的なMalassezの上皮遺残(Epithelial rest of Malassez)とよばれる上皮系細胞塊も含まれている。 しかしながらインプラントではインプラント体が歯槽骨と直接オッセオインテグレーションしているため上記のような機械的受容器と咬合圧を緩衝する歯根膜の機能が存在していない2)。 歯根膜を有する天然歯の変位量の平均は25〜100μmであるが、歯槽骨とオッセオインテグレーションしているインプラントは約3〜5μmであるとの報 天然歯は、歯根を支持する歯周組織として歯肉(gingiva)・歯根膜(periodontal ligament)・セメント質(cementum)・歯槽骨(alveolar bone)が存在しており、約1mm幅の上皮性付着と同じく約1mm幅の結合組織性付着が認められ、約2mmの生物学的幅径が存在する。しかしながらインプラント周囲では約2mmの上皮組織と約1.5mmの結合組織による生物学的幅径は存在しているがアバットメントと周囲組織とは接しているのみで天然歯のような付着様式とは異なっている(図1)1)。 さらに、天然歯とインプラントとの違いの1つに歯根膜の有無が挙げられる。歯根膜はセメント質と歯槽骨との間に介在する線維性結合組織であり、厚さは0.2〜0.35mm程で歯周靱帯ともよばれている。歯根膜は歯を支持する機能や咬合圧の調整、歯槽骨やセメント質の改造、知覚の受容など歯周組織の恒常性の維持を担っている。歯根膜にみられる線維は膠原線維、オキシタラン線維、弾性線維などであり、そのなかでも膠原線維はシャーピー線維としてセメント質と歯槽骨を連結する役割を担っている。各線維は力学的に歯を支持できるように024天然歯とインプラント
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