頰などの筋肉を育てて歯を動かす」という点が大きく異なります。導入を決意したのは、「形ではなく機能を治す」ことこそが、子どもの将来を守る唯一の道だと確信したからでした。 しかし、導入当初はさまざまな課題に直面しました。「なぜワイヤーを使わないのか」「装置をつけるだけで治るのか」といった保護者の疑問に一つ一つ丁寧に答えながら、理解を深めていく必要がありました。そして、治療を継続するためには、子ども本人の努力だけでなく、家族全体の協力が必要不可欠です。私は、“装置を渡す治療”から“家族で学ぶ治療”への転換を意識しました。子どもが自分の体の変化を理解し、家族がその努力を支える環境を作ること。そのためには、単なる器具の導入にとどまらず、行動変容を支える教育の仕組みが必要でした。1.MFTを継続できる環境と人材の整備 Myobrace®の治療を根づかせるうえで、とくに重要だったのがMFT(Oral Myofunctional Therapy:口腔筋機能療法)の実践体制の整備でした。MFTは舌・唇・顎の筋肉を正しく使うためのトレーニングで、呼吸・嚥下・発音・姿勢といった基礎機能を整えます。 この療法を継続的に指導するため、当院ではMFT専用ルームを新設しました(設備導入レポート② P.34参照)。鏡・モニター・姿勢確認カメラを設置し、子ども自身が自分の動きを視覚的に確認できるよう工夫しています(図2)。 また、家庭でも継続できるよう、練習用ワークシートや動画教材を用意しました。保護者にもトレーニング内容を共有し、親子で一緒に取り組む「家庭内MFT」を推奨しています。このようにサポート体制を整えた結果、治療の継続率が飛躍的に向上しました。 さらに、この仕組みを支えるためには、スタッフの意識改革も必要でした。MFTの成功には、技術だけではなく、“寄り添う力”が求められます。歯科衛生士や歯科助手が、従来の補助者ではなく「教育者」「コーチ」として子どもを導く存在へと変わる必要がありました。院内研修を重ね、指導方法だけでなく、声のトーン・目線・笑顔の使い方までを学び直しました。「叱る指導」から「褒める指導」へ。この小さな変化が子どもたちのやる気を引き出し、治療を成功へ導く鍵となったのです。図❶ Myobrace® J1(オーティカインターナショナルより提供)PART図❷ MFT専用ルーム2
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