1 小児矯正に最も必要だったもの舌の位置と嚥下機能が整うことで、いびきや口2PART 父からおしむら歯科を継承した当初、私は「この町で子どもたちに本当に必要とされる歯科とは何か」という問いに直面していました。地域の子どもたちの多くが、口呼吸・低位舌・姿勢不良など、見過ごされがちな機能的な問題を抱えていました。これらは単なる“歯並びの悪さ”の原因であるだけでなく、将来的な健康の質をも左右する根本的な課題でした。 小児矯正とは、歯を並べる治療ではなく「口腔機能を正しく育てる治療」です。歯列不正は遺伝的要素もありますが、実際には呼吸・嚥下・姿勢・舌位といった生活習慣の影響が大きく、これらの機能が未発達であることが問題の本質です。したがって、歯を動かして形を整えるだけでは根本的な解決にはなりません。私は、口腔機能を正常に発達させることこそが、子どもの将来の健康と生活の質を支える基盤になると考えています。 口腔機能が正常に発達すると、以下のような変化がみられます。鼻呼吸が確立されることで、免疫力が高まり風 こうした変化は、単に「見た目を整える」こと以上に、子どもの発達そのものを支える重要な要素となります。つまり小児矯正とは、“歯並びの治療”ではなく、“生涯の健康に対する投資”であり、歯科医療が担うべき「健康教育」の一部でもあるのです。 診療の現場で、口呼吸が原因で集中力が続かない子ども、嚙む力が弱く食事を楽しめない子ども、発音に自信がもてない子どもに多く出会いました。そうした姿を見るたびに、「歯を治す」だけでは不十分であると痛感し、子どもの身体全体の発育を支援できる歯科医療のあり方を模索し始めました。 その答えの一つとしてたどり着いたのが、Myobrace®という装置でした(図1)。Myobrace®は、歯を動かすための矯正装置ではなく、筋肉の正しい使い方を体に覚えさせる“筋機能トレーニング装置”です。ブラケット矯正が「歯の位置を力で動かす」のに対し、Myobrace®は「舌・唇・小児矯正とは「正しく育てる医療」邪をひきにくくなる。呼吸が改善され、睡眠の質が上がる。顎の成長が促されることで、顔貌のバランスが整い、発音や表情が豊かになる。Myobrace®導入の背景と目的小児矯正クリニックのつくり方成功する
元のページ ../index.html#8