DHstyle 2025年冬号
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16 DHstyle 2025 WINTER インフォームド・コンセントは“説明と同意”と表現され、1997年に医療法第1条の4第2項に「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るように努めなければならない」と明文化されています。 私たち歯科衛生士には診断の権限はなく、歯科医師の指示の下で業務を行いますが、歯周組織検査や歯周基本治療を行います。その際、まったく何の説明もせずに検査や治療を行うことは現実的ではありません。歯科衛生士が患者さんにかかわる際は、歯科医師の診断があり、必要な検査や治療の説明を受けて同意を得ている大前提で携わります。そのため、私たちは再度、歯科医師から伝えた内容を患者さんが理解しているかを確認する必要があります。 さらに、歯科衛生士の役割は、患者さん自身が途中離脱なく治療に参画し、歯科医師と患者さんの希望の延長線上へ導いていくこととも考えられます。ですので私たち歯科衛生士は、一つ一つの場面において、より慎重に丁寧に患者さんに寄り添って説明を行い、同意を得る必要があると思います。 歯の周囲組織の疾患は、ギネス世界記録に登録されるほど罹患者数が多いです。わが国も例外ではなく、国民の成人の約8割が罹患しているとも読み取れます1)。しかし、歯科医院で定期的な受診をしていない患者さんも多く、痛みのない歯周組織の病変を認識できず、「自分は大丈夫」と考える人が存在します。そのため、定期的な通院を続ける人は増えたものの、いまだ補綴物の脱離や知覚過敏を主訴に来院される方も多く(図1)2)、「歯周組織検査を了承してもらいにくい」という相談を歯科衛生士から受けることがあります。 加えて、近年はホームケア用品も充実し、口腔内の健康に興味をもっている方は自身で複数の用品を使用して十分に磨いており1)、「これだけ磨いているのだから歯周病にはかからないだろう」と考え、検査の必要性を感じない方もいます。インフォームド・コンセントとは歯周病の検査に理解を得られにくいワケ

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