高病原性低病原性デンタルプラーク細菌の塊図❷ デンタルプラーク(左)とデンタルバイオフィルム(右)の最新の概念デンタルバイオフィルム微生物・細胞間でコミュニティを形成106 DHstyle 2025 WINTER歯科の介入図❶ 患者の口腔内のバイオフィルムを高病原性から低病原性に変化させることが重要(参考文献1)より引用改変) う蝕や歯周病の病因論は、技術革新に伴い変化しています。日常臨床のなかでこれらの2大疾患には頻繁に遭遇し、避けられません。また、最新の病因論では、口腔バイオフィルムの病原性の変化により疾患が進行するとされています。したがって、われわれの日常臨床においては患者の口腔内のバイオフィルムを、高病原性から低病原性に変化させることが重要なのです(図1)。 世界中でバイオフィルムの研究が進むなかで、その概念は現在も変遷を遂げています。わが国では1995年に野杁らによる「ヒト歯肉縁下プラークの研究 −プラーク細菌の定着・増殖における細菌バイオフィルムの関与について−」2)が、最初に発表された論文とされています。 それでは、デンタルプラークとデンタルバイオフィルムにはどのような違いがあるのでしょう。最新の考えでは両者はまったく同一なもので、概念だけが異なっているとされています。つまり、デンタルプラークは歯に付着した細菌の単なる塊で、う蝕や歯周病の原因とされるのに対し、デンタルバイオフィルムは単なる細菌の塊ではなく、他の微生物とコミュニティ(共同体)を形成し、微生物間・細胞間で情報交換しながら複雑な三次元構造を構築することで、単独(浮遊状態)で存在するときとは異なった挙動(遺伝子発現・代謝など)を示すものとされているのです(図2)3)。 簡単に述べると、デンタルバイオフィルム(以下、バイオフィルム)の病原性は構成される細菌同士がお互いに連絡を取り合い、影響しあって変化していくのです。 図3に広汎型慢性歯周炎、ステージIV、グレードCと診断された70歳、男性の口腔内写真とデンタルX線写真を示します。口腔内には多量のバイオフィルムと歯石の沈着、顕著な骨吸収像が病原性の異なるバイオフィルムとはバイオフィルムの変化が見える!口腔細菌検出装置orcoa(オルコア)須崎 明 Akira SUZAKI愛知県・医療法人ジニア ぱんだ歯科 歯科医師
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